象形文字の秘密
漢字の解読

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特殊部首の解読 その6/75

 今回は「咸」と「老-ヒ」の解読を紹介します。


1.「咸」の解読とその会意文字

 よく使われる「感」に関わる「咸」を中心とする解読です。第15回で紹介した「戈」から解読を進めます。「咸」の会意文字からは「磨り減る」意味が抽出できます。しかし、辞書の中にある「みな」の意味や、「感」の文字の解読から古い時代には「ムチの扱い型」の意味が読み取れます。

」=「弋」+「ノ」:=くい+特別な=>特別なくい=>武器にするくい=>武器=>ほこ=>たたかう(再掲。cf..15)
」=「左はね棒」+「戈」:=垂れ下がるもの+武器=>垂れ下がる武器=>ムチ(意味を追加。「戈」cf.15)
」=「戊」+「同-冂」=ムチ+女の体=>ムチを持つ女体=>ムチを構えた女=>ムチを構えた体=>共通する型=>行き渡る型=>みなの型=>みな(「同-冂」cf.41)
」=「戊」+「同-冂」=ムチ+女の体=>ムチを持つ女体=>ムチを構えた女=>ムチ=>先のすりへるもの=>摩滅するもの=>へる

 参考までに「咸」の辞書の解字は以下のようになっています。

「咸」 解字:形声。意符の口(くち)と音符の戌(呼ぶ声の意)とから成る。口で呼ぶ意。ひいて、「みな」の意に用いる。

」=「言」+「咸」:=言葉+武器を持つ人=>武器を持つ人の言葉=>(武器を渡せる)誠実なものの言葉=>信頼できる言葉=>やすまるもの=>やわらぐ(「言」cf.66)
」=「糸」+「咸」:=いと+摩滅するもの=>摩滅するなわ=>物を縛った縄=>物を縛る=>とじる(cf.49)
」=「氵」+「咸」:=みず+摩滅するもの=>(蒸発して)へってゆく水=>水がへる=>へる
」=「口」+「咸」:=くち+摩滅するもの=>口のすぼんでいく発声=>息長く(神を)呼ぶ言葉=>叫ぶ(祈りの)言葉=>さけぶ(「口」cf.)
」=「咸」+「頁」:=摩滅したもの+頭=>やせた頭=>やせた顔(「頁」cf.60)
」=「歯」+「咸」:=は+摩滅するもの=>すりへったは=>しみる歯=>しみる=>しおからい
」=「竹」+「咸」:=たけ+摩滅するもの=>摩滅する(戒を記した)竹札=>戒めごと=>いましめる(cf.54)
」=「金」+「咸」:=金属+同じ型=>同じ型の金属=>金属製の針=>はり

 「或:=武器をもつ女=>武器がある=>ある」(cf.41)の武器は一般の武器で、「咸」はムチのようです。ムチの先は振り回すのに手の先で敏感に操る必要があり繊細な神経を必要とするようで、武道の型を生み出す基になったと考えられます。

」=「咸」+「心」:=ムチを持つ女+こころ=>ムチを構える心=>危険に対して身構える警戒心=>ビクビクする神経=>感覚を鋭くする=>かんじる(「心」cf.73)
」=「忄」+「感」:=感覚+鋭い感覚=>強く感じる=>痛く感じ入る=>痛すぎる感覚=>痛みをうらむ=>うらむ(「忄」cf.73)
」=「扌」+「感」:=て+ビクビクする神経=>手のビクビク感=>わなわなふるえる手=>ふるえる(「扌」cf.12)
」=「車」+「感」:=くるま+ビクビクする神経=>がたがたする車=>でこぼこ道にはまる=>車が穴にはまる(「車」cf.24)

 ちょっと脇道にそれます。四書五経のひとつである易経は周の文王などが著したとされる占いの古典です。未来に対する占いばかりか、その対処法までが記述されている名著です。

 易経では各卦に名前が付いており、「艮(=山)下兌(=澤)上」の卦は「澤山咸」という名前ですがこの卦には例外的に原義の解説が欠落しています。
 上の「咸」の解読から「山上の沢は咸:山上の沢から流れ出た水が行き渡り(皆を)潤す」が原義の解説であったと考えられます。

 現在の「澤山咸」解説は「女を娶(めと)るに吉。咸は感なり。」と男の視点であり、また「咸」と「感」が混同され、この卦の細かい解説が不思議なことに「咸」ではなく「感」で展開されています。
 その他の原義等の解説から判断する限り易経は母系時代に生まれ、文王などが父系社会用に改版したらしく、垣間見える原典のすばらしさが改版により損なわれている感じがします。


***** 開始 関連する辞書の解字 *****

「諴」 解字:形声。意符の言(ことば)と音符の咸(やわらぐの意)とから成る。言葉がやわらぐ意。
「緘」 解字:形声。意符の糸(なわ)と音符の咸(はこの意)とから成る。箱に縄をかける、「とじる」意。
「減」 解字:形声。意符の水(みず)と音符の咸(すくない意)とから成る。水が少なくなる意。ひいて、「へる」、「へらす」の意に用いる。
「喊」 解字:会意形声。意符の口(くち)と意符と音符を兼ねる咸(大声で神を呼ぶ意)とから成る。口で叫ぶ意。 
「顑」 解字:形声。意符の頁(かお)と音符の(へる意)とから成る。顔に生気がなくなる意。
「鹹」 解字:形声。意符の歯(しお)と音符の咸(口にふくむ意)とから成る。口に含んで塩気がある、「しおからい」意。
「箴」 解字:形声。意符の竹(たけ)と音符の咸(さしこむ意)とから成る。
「鍼」 解字:形声。意符の金(金属)と音符の咸(はりの意)とから成る。金属製の針の意。

「感」 解字:形声。意符の心(こころ)と、音符の咸(うごかす意)とから成る。ひとの心を動かす意。
「憾」 解字:形声。意符の心(こころ)と音符の感(うらむ意)とから成る。恨みに思う意。
「撼」 解字:形声。意符の手(て)と音符の感(うごかす意)とから成る。手で「うごかす」意。
「轗」 解字:形声。意符の車(くるま)と音符の感(穴に陥るの意)とから成る。車が穴に落ちて行き悩む意。

***** 終了 関連する辞書の解字 *****



2.「老-ヒ」の解読とその会意文字

 「老-ヒ」は第49回「ヒ」の所で一度紹介しましたが、会意文字、転注文字に関して新しい解釈が思い付きましたので、「老-ヒ」について今回は更に詳しく検討します。


老-ヒ」=「土」+「ノ」:=男の人+特別な=>特別な男の人=>年取った男の人=>年取った人=>盛りを過ぎたもの=>おいる=>老化(再掲・追加あり。cf.49)
」=「老-ヒ」+「ヒ」:=老人+普通の男=>年取った男=>老男子=>老人
」=「口」+「老」:=口+老人=>老人の口=>しわがれた声(「口」cf.39)
」=「老」+「日」:=「老」+「日」:=老人+女頭領=>年取った女頭領=>おいたもの/おいる=>いこじなもの(「日」cf.45)
」=「口」+「耆」:=くち+いこじなもの=>味にこだわるもの=>常にこのむ=>たしなむ(「口」cf.39)
」=「扌」+「耆」:=世話するもの+おいたもの=>世話する老人=>ささえもつ=>ささえる(「扌」cf.12)
」=「老」+「毛」:=年取ったもの+毛=>年寄りの毛=>しらが=>おいぼれる(「毛」cf.65)
」=「老」+「句」:=年取ったもの+丸いもの=老人の丸いもの=>肌のしみ=>しみ(「句」cf.29)

 はじめは「老-ヒ」だけで「年寄り」の意味でしたが、続く時代に男の年寄りを「老」で現し、次ぎの時代には「者:=老女子」と「老:=老男子」(60歳以上の老人)が対の意味になったと考えられます。続く豊かな時代に、同じ老人でも女は「耆」(70以上の老人)が使われ、しみのできた体(「耈」)で白髪をたたえ(「耄」)、支えられて歩き(「搘」)、そしてグルメな味にこだわる食事を楽しんだ(「嗜」)ようです。
 老いた男子に関する語には「咾」「白髪」があります。


***** 開始 関連する辞書の解字 *****

「耆」 解字:形声。意符の老(おいる)と音符の旨(いたる意)とから成る。老いに至る、おいる意。
「老」 解字:象形。長毛で背の曲がった老人が杖を着いたさまにかたどる。背の曲がった老人の意。ひいて、「おいる」意に用いる。
「咾」 解字:なし(角川漢和大辞典)。しわがれた声(康煕字典)
「嗜」 解字:形声。意符の口(くち)と音符の耆(うまい意)とから成る。うまいとよろこび味わう意。
「搘」 解字:形声。意符の手(て)と音符の耆(ささえる意)とから成る。手でささえる意。
「耄」 解字:形声。意符の老(おいる)と音符の毛(くらい意)とから成る。視力の衰えた老人の意。ひいて、「おいぼれる」意に用いる。
「耈」 解字:形声。意符の老(おいる)と音符の句(しみの意)とから成る。顔にしみのできた老人の意。

***** 終了 関連する辞書の解字 *****



 次は「老-ヒ」の仲間の「者」の解読とその会意文字です。意味は二つに枝分かれしています。ちなみに辞書の解字は次ぎのようになっています。

「者」 解字:会意形声。意符の??(箕の省略形)と、意符と音符を兼ねる??(たきぎの意)とから成る。薪を箕の中に蓄える意。かりて、「もの」の意に用いる。

」=「老-ヒ」+「日」:=年取った人+女領主=>年取った女領主=>盛りを過ぎたもの=>年取ったもの=>役を割り振る長老=>部族の大物=>もの(「日」cf.45)
」=「老-ヒ」+「日」:=年取った人+女領主=>年取った女領主=>高座にいるもの=>一段と高いもの

」=「言」+「者」:=ことば+年取ったもの=>年取ったものの言葉=>いろいろと説く=>いろいろの説明=>いろいろ(cf.66)

」=「犭」+「者」:=けもの+年取ったもの=>年取ったけもの=>老人のような毛を持つけもの=>まばらな毛を持つもの=>いのしし=>ぶた(「犭」cf.13)
」=「者」+「阝」:=年取ったもの+有機的にはたらくもの=>有機的にはたらく年寄り達のいるところ=>みやこ「(「阝」旁cf.46)

」=「大」+「者」:=男根の大きいもの+年寄り=>男根の大きい年寄り=>大げさなもの=>おごるもの=>おごる(cf.13)
」=「扌」+「奢」:=手中のもの+おごるもの=>配下のおごるもの=>ひきさく(「扌」cf.12)
」=「罒」+「者」:=うらまれる+年取ったもの=>うらまれる年寄り=>うらまれる役を割り振るもの(そんな役割)=>職務を任ずるもの=>任命するところ=>(役を)明示するところ=>しるす(訂正。cf.48)
」=「日」+「署」:=太陽+明示するもの=>光線の帯をはっきりと見せる太陽=>昇り始めた太陽=>あけぼの(「日」cf.日)

」=「尸」+「者」:=しり+年取ったもの=>年取ったもの尻=>つぶして食うもの=>ころす=>ほうる(「尸」cf.16)
」=「衣」+「者」:=年寄りの衣=>綿を入れた衣=>わたいれ(「衣」cf.50)
」=「竹」+「者」:=たけ+年取ったもの=>かれた竹で作るもの=>はし(「竹」cf.54)
」=「日」+「者」:=太陽+年取ったもの=>年取った太陽=>沈みだした太陽(13:00~15:00)=>あつい太陽=>あつい(「日」cf.45)


」=「糸」+「者」:=いと+一段と高いもの=>縫い始めの縛りだま=>縫い始め=>はじめ(「糸」cf.49)
」=「氵」+「者」:=みず+一段と高いもの=>海や川の一段と高いところ=>なみうちぎわ
」=「土」+「者」:=つち+一段と高いもの=>一段と高くした土=>土のかきね=>かき(「土」cf.19)

」=「サ」+「者」:=男達+年寄り=>男達と老女=>気性のこわばったもの=>ひどく頑固な性格=>いちぢるしい(「サ」cf.62)
」=「足」+「著」:=あし+こっわばったもの=>こわばった足=>とどまった足=>ぐずぐずする(「足」cf.41)

」=「者」+「灬」:=年寄り+子供達=>年寄りと子供達=>にて食べるもの=>にる(「灬」cf.61)


 以上「年取ったもの」意味をまとめてみると、時代順に次ぎのように移り変わっています。
「老-ヒ」=「土」+「ノ」:=男+特別な=>特別な男=>年取った男=>老男子=>老人=>年取ったもの
「老」=「老-ヒ」+「ヒ」:=年取った男+普通の男=>年取った男=>老男子=>老人=>年取ったもの
「者」=「老-ヒ」+「日」:=年取ったもの+女頭領=>年取った女=>老女=>年取ったもの
「耆」=「老」+「日」:=年取ったもの+女頭領=>年取った女=>老女=>年取ったもの

 「者」には中央に「丶」のついた九画のものもあります。点をつけて同じ者でも従来の者とは異なることを強調し「特別な女領主=>現在の卓越した(たたえるべき)女領主」とした現実使用の状況は読み取れますが、文字解読の観点からはあまり変わりません。


」=「老-ヒ」+「子」:=年寄り+子供=>年寄りと子供=>年寄りを養う子供=>年寄りに仕える
」=「口」+「孝」:=くち+老人と子供=>老人と子供のくち=>大声でさけぶ=>さけぶ=>ほえる(「口」cf.39)


***** 開始 関連する辞書の解字 *****

「諸」 解字:形声。意符の言(ことば)と音符の者(もろもろの意)とから成る。口数が多い意。引いて、「もろもろ」の意に用いる。
「猪」 解字:形声。意符の豕(犬または豚ブタ)と音符の者(ちいさい意)とから成る。ちいさい豚、豚の子の意。転じて、野生の豚、「いのしし」の意に用いる。
「都」 解字:形声。意符の邑(くに)と音符の者(おおい意)とから成る。国中で人の多いところ、「みやこ」の意。

「奢」 解字:形声。意符の大(おおきい)と音符の者(おおい意)とから成る。多過ぎる意。ひいて、「おごる」意に用いる。
「撦」 解字:形声。意符の手(て)と音符の奢(ひらく、さく意)とから成る。手で裂き開く意。

「署」 解字:形声。意符の网(あみ)と音符の者(もうける意)とから成る。鳥獣を捕らえる網を設ける意。借りて、部署・役割・役所の意に用いる。
また、借りて、「しるす」意に用いる。
「曙」 解字:形声。意符の日(ひ)と音符の署(はじめの意)とから成る。太陽の出初め、「あけぼの」の意。

「屠」 解字:形声。意符の尸(尾の省略形。しり、陰部)と音符の者(裂ける、裂傷の意)とから成る。子供を生むときの陰門の裂傷の意。
「褚」 解字:形声。意符の衣(ころも)と音符の者(蓄える意)とから成る。綿の入れてある衣服、わたいれの意。
「箸」 解字:形声。意符の竹(たけ)と音符の者(はさむ意)とから成る。食物をはさみとる竹製の「はし」の意。
「暑」 解字:形声。意符の日(ひ)と音符の者(やける意)とから成る。太陽が焼けるように照り付ける意。ひいて、「あつい」意に用いる。
「緒」 解字:形声。意符の糸(いと)と音符の者(はじめの意)とから成る。いとのはじめ、糸口の意、ひいて、物事の発端の意に用いる。
「渚」 解字:形声。意符の水(みず)と音符の者(こだかい意)とから成る。水の中の小高いところのの意。
「堵」 解字:形声。意符の土(つち)と音符の者(つみかさねる意)とから成る。土を積み重ねた「かき」の意。
「著」 解字:なし。箸の俗字とあり、箸の解字。
「躇」 解字:形声。意符の足(あし)と音符の著(たたづむ意)とから成る。たたづむだけで前へ進まない、たちもとおる意。

「煮」 解字:形声。意符の火(ひ)と音符の者(おもむろの意)とから成る。汁をとろ火でゆっくりとにつめる意。ひいて、「にる」意に用いる。

「孝」 解字:形声。意符の「孝-子」(年寄りの省略形。長髪の老人の意)と音符の子(やしなう意)とから成る。老人を養う意。ひいて、父母に仕える意。
「哮」 解字:形声。意符の口(くち)と音符の孝(大声で叫ぶ意)とから成る。大声で叫ぶ、「ほえる」意。

***** 終了 関連する辞書の解字 *****



「考」は第27回と第30回で示した「考-土-ノ」=「与-一(下側)」の解読を訂正するとともに、それに合わせた「与」の訂正から載せます。

与-一」=「ト」+「口-L」:=(占)棒+男の徳=>占棒を持つ男=>占いをする男=>男占師(訂正)
」=「与-一」+「一」:=男占師+体=>占師の体=>占師=>(女領主が)女主人たちにあたえる占師=>あたえる

」=「老-ヒ」+「与-一」:=年取った男+男占師=>年取った男占師=>男が占いをする=>(男が)予知する=>男がかんがえる=>かんがえる
」=「木」+「考」:=き+男占師=>男占師の占棒=>(陶酔用の)芳香の強い木=>たえ(「木」cf.59)
」=「扌」+「考」:=て+男の占師=>男の占師の手=>占棒でとんとんとたたく=>棒でたたく=>たたく=>うつ(「扌」cf.12)
」=「火」+「考」:=ひ+男占師=>男占師の火=>香をたく=>いぶす=>あぶる(「火」cf61.)

 男占師は女領主がまとめて養成し各女主人へ与えるもの(「与」の意味)のようです。男占師の占い法は、陶酔用に棒を打ち鳴らし(「栲」)、香をたいて(「烤」)、催眠状態で予言を宣託(「考」の意)したと考えられます。
 前項で示した「易経」が女の右脳を中心とする無意識の勘による占いであったのに対し、男の占いは左脳を中心(考の意味)とするシャーマン的な占いであったようです。


 六書には漢字の構成法として「象形」「指事」「会意」「形声」「転注」「仮借」があると書かれています。古来、転注は定義が明確でなく、その解釈がたくさんあるようです。説文解字では転注の例として「老」と「考」が示されています。今回の「老-ヒ」を例に会意と転注の従来と異なる解釈を示しましょう。

 「孝」は「老-ヒ:=年取ったもの」と「子:=こども」とが、「煮」は「老-ヒ:=年取ったもの」と「灬:=子供達」とが各々合成され、要素が並列もしくは対等な関係です。他の顕著な例をもう一つ加えると「一+L:=女の体」と「ユ:男の体」の合成である「互=男女の体=>互いに引き合うもの=>たがい」があります。
 これらは、合成される要素は対等もしくは並列の関係であり、修飾の関係にはありません。

 一方転注の例とされる「老:=年取った男=>老人」は「老-ヒ:=年取ったもの」と「ヒ:=普通の男」とが、「考:=年取った占師」は「老-ヒ:=年取ったもの」と「与-一:=男の占師」が各々合成されていますが、「老―ヒ」が共通の意味を持って他を修飾しています。

 両者が主語と動詞の場合も、「主語xが動作yをする」は「動作yをする主語x」と修飾の関係と考えることができます。両者が動詞と目的語の場合も、「目的zを動作yする」を「動作yされた目的z」と受身の修飾関係と考えることができます。

 「転注」の「転」は、具体的に「十:=男根・男」、「土:=男の人」、「土+ノ:=おいる」、「老:年取った男」、「耆:=年取った女」と、次々に一つの要素が成長して新たな意味の要素を展開してゆくことと考えられます。

 「会意」の「意味を会わせる」に対し、「転注」の「次々と注いで行く」を素直に考えると「~のような」「~である」「~する」等の「修飾的意味を他の世界のものに注いでゆく」と解釈できます。

 合成される要素が対等な関係の語は「会意:=意味を合成した文字」と解釈し、合成される要素が修飾の関係にある語は「転注:=意味を次々と他分野に注ぎ込む文字」と解釈することが適切であると考えられます。

 このブログの目的のひとつは、これまで形声とされている語を会意で説明しようとする企てであるとしきましたが、上の解釈ではこれまで形声とされている語を会意と転注で説明しようとする企てであると訂正する必要があります。

 厳密な解説はともかく、このブログでは一貫して各要素が修飾の関係にある転注文字と、並列の関係にある会意文字とを区別せずともに会意文字として紹介します。
 ただし、純粋に狭い真の意味での会意文字である場合には注意をつけます。

 最後に参考までによく引用される転注文字「楽」の従来説明とこのブログでの解読とを示します。

従来説明:
「楽」はもともと「音楽」の意味をもつ象形文字であったが、音楽を聴くことは「たのしい」ので、「ラク」という音と「たのしい」という意味に転用された。
「楽」 解字:樂(象形)の解読
「樂」 解字:象形。くぬぎの木に野生の山繭が付着している形にかたどる。粒状の山繭の付いているくぬぎの木の意。借りて、音楽の意に用い、さらに「たのしむ」意に用いる。

このブログの第64回「氺-|:=ほんのちょっと」で紹介した「楽」の解読:
「楽」=「白」+「氺-|」+「木」:=しろい+ほんのちょっと+木=>(蚕が大量に育ち)ほんのちょっと白くなった(くわの)木=>(絹の採れる)たのしみな木=>(心待ちで)たのしい木=>たのしい(再掲。「白」cf.45)


***** 開始 関連する辞書の解字 *****

「考」 解字:形声。意符の「老-ヒ」(老の省略形。としより)と音符の丂(まがる意)とから成る。腰の曲がった年寄りの意。かりて、「かんがえる」意に用いる。
「栲」 解字:形声。意符の木(き)と音符の考(くさい臭いの意)とから成る。くさい臭いの木「たえ」の意。
「拷」 解字:形声。意符の手(て)と音符の考(小木で打つ擬声音)とから成る。手に小木を持って音をたてて打つ意。ひいて、「うつ」意に用いる。
「烤」 解字:大字源、康煕字典に題字なし(「あぶる」は諸橋大字源による)。

***** 終了 関連する辞書の解字 *****


 解読の全体像ですが、今回でやっと第三部が終わります。次回からの最終第四部でまた新たな部首の塊を解読します。


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 このブログは漢字の解読を紹介します。従来、部首はほとんど象形とされていますが、部首である「用」「角」「車」「里」「鬼」「竜」「魚」「黄」は部首「田」を含んでいます。  「田」を含む部首を「田」から派生した文字と説明しようとする探検です。

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