象形文字の秘密
漢字の解読

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「Y」の追求10 /58

「人」の解読(その5)

 前回に続き「大」の展開です。


1.「因」の解読と展開

「因」は第36回で少し紹介した「姻」や「烟」の意味の流れを二つに分けたほうがよいことが判明したので、解読を少し修正し欠けていた字を補充します。

」=「口」+「大」:=かこう+大きい男=>大きい男を囲う=>囲われた男=>むつむ男=>むつむ所=>しとね
」=「口」+「大」:=かこう+大きい男=>大きい男を囲う=>囲われた男=>むつむ男=>むつみ事=>(諸事の特に乱れの)みなもと=>よりどころ=>よる

」=「艸」+「因」:=くさ+しとね=>草のしとね=>しとね
」=「糸」+「因」:=いと+しとね=>しとねように撚った糸=>しとね
」=「衣」+「因」:=ころも+しとね=>しとねの衣(パジャマ/みごろ)=>しとね

」=「因」+「心」:=囲う男+こころ=>男を囲う心=>かわいがる=>いつくしむ

」=「口」+「因」:=くち+みなもと=>口の奥=>のど
」=「女」+「因」:=おんな+みなもと=>男を囲う女=>婿取りの女=>婿取り(母系社会)=>婚姻=>嫁取り(父系社会)
」=「火」+「因」:=ひ+みなもと=>火のみなもと=>(着火直前の)けむり=>けむる
」=「氵」+「因」:=みず+みなもと=>みずのみなもと=>みずの流れるさま(設文解字にナシ。意味は康煕字典による)

 囲った男を「布団」とみなす感覚が比喩的で連想の豊かさを感じます。「デカンショ節(デカルト、カント、ショーペンハウエルの短縮形):明治中期の学生の酒歌」の中に「男-女の敷布団、女-男の掛け布団」という一節があるのを思い出します。


***** 終了 関連する辞書の解字 *****

「因」 解字:形声。意符の口(家の周りの囲い)と、音符の大(ひと)とから成る。他人の家に身を寄せて生活する意。ひいて、「よる」意に広く用いる。(再掲)

「茵」 解字:形声。意符の艸(くさ)と、音符の因(しとねの意=裀)とから成る。草で作った「しとね」の意。
「絪」 解字:形声。意符の糸(ぬの)と、音符の因(しとねの意=茵)とから成る。布製の敷物の意。
「裀」 解字:形声。意符の衣(ころも)と、音符の因(かさねる意)とから成る。布団の上に敷き重ねたもの、しとねの意。

「恩」 解字:形声。意符の心(こころ)と、音符の因(いたむ心の意)とから成る。いたみあわれむ意。ひいて、「いつくしむ」意に用いる。
「咽」 解字:形声。意符の口(くち)と、音符の因(のむ意=飲)とから成る。口で飲む意。ひいて、のどの意に用いる。
「姻」 解字:形声。意符の女(おんな)と、音符の因(たよりすがる意=依)とから成る。女が嫁入りし頼りとするところ、婿の家の意。
「烟」 解字:なし(「煙」の解字。「烟」は「煙」の別体とされている)
「洇」 題字なし。

***** 終了 関連する辞書の解字 *****



2.「夾」の解読と展開

 「夾」は常用漢字では、すべて「侠-イ」と変形した俗字を使っているので、元に意味が分かりにくくなっています。

」=「一」+「人」:=からだ+男=>男の体=>大きい体=>おおきい(cf.13)
」=「人」+「人」:=おとこ+おとこ=>おとこたち=>(女に)したがうもの=>したがう(cf.55)

「夾」=「大」+「从」:=おとこ+従う男=>大きい男に従う男達=>大きい男を両脇から守る男達=>両脇から支える=>はさむ=>挟むところ=>わき

 下の辞書の解字を参考に解読しましたが、一つ疑問が残ります。「入」は基本の文字「人」から派生した特別な形と意味を持つことは紹介しました。「夾」の左右が始から「人」であったなら、それが「入」に代わる可能性はほとんどありません。
以下の展開で「陜」(左右が「人」)に「陝」(左右が「入」)の変形があり、辞書では別字として載せられています。この左右の「入」が父系社会で「人」に変わる可能性は高いのです。このことから、先の「夾」を母系社会中心に解読し直すと次のようになります。

」=「大」+「入」+「入」:=男根+はいる+はいる=>男根が前後から入る=>(女の)体を(前後から)はさむ=>はさむ=>はさむところ=>わき

 以上、意味から考えて「夾」の両側は「入」が正確な形であったと推測できます。

」=「阝」+「陝-阝」:=たくさん+大小のもの=>大小のたくさんのもの=>?=>秦の領国の名
」=「阜」+「夾」:=たくさんのもの+はさむ=>たくさんのものがはさむ=>せまい

」=「イ」+「夾」:=部族内の男の仕事+大きい男を両側から守る=>男を守る仕事=>男に使える男=>男だて
」=「扌」+「夾」:=両腕+はさむ=>両手ではさむ=>はさむ
」=「犭」+「夾」:=けもの+わき=>けものの脇=>狭いところ=>せまい
」=「石」+「夾」:=いし+はさむ=石がはさむ=>岩にはさまれた所
」=「艸」+「夾」:=くさ+はさむ=>草のはさむもの=>実をはさむさや=>さや
」=「竹」+「はさむ」:=たけ+はさむ=>竹ではさむ=>めどき=>竹のはし
」=「山」+「夾」:=やま+はさむ=>山に挟まれる谷間=>山あい=>はざま
」=「金」+「夾」:=かね+はさむ=>はさむ金物=>はさみ


」:=後ろが開いたもの=>隠す場所=>かくす/かくまう(cf.31)
」=「匚」+「夾」:=かくす+はさむもの=>道具をかくす=>道具をしまうもの=>蔵す(意味は「説文解字」による)
」=「匚」+「夾」:=かくす+男根の大きい男とそれを助ける男達=>かくす+かしずく男達=>男の館(逆ハーレム)
」=「忄」+「匧」:=こころ+逆ハーレム=>夜の男達を隠した心=>わくわくする=>こころよい

 「匧」の二つの意味の流れのうち、前者は表の意味であり、後者が本来の意味であったのです。後者の意味がはっきりして初めて、「愜」の意味が解けます。


***** 開始 関連する辞書の解字 *****

「夾」 解字:形声。意符の大(ひと)と、音符の从(二人の人)とから成る。一人の人を二人の人が両側から守るさまにより、「はさむ」意、ひいて、助ける意に用いる。

「陝」 解字:形声。意符の阜(おか・やま)と、音符の(きりわける意)とから成る。昔、周公と邵公が分けて治めた土地の名。
「陜」 解字:形声。意符の阜(おか、やま)と、音符の夾(はさまれる意)とから成る。丘や山に両側から挟まれている狭い土地、谷間の意。

「俠」(侠) 解字:形声。意符の人(ひと)と、音符の夾(たのむ意=挾)とから成る。自分の力を頼見にして人を助ける人の意。
「挾」 解字:形声。意符の手(て)と、音符の夾(両脇からはさむ意)とから成る。手で両脇に挟む意。ひいて、「はさむ」意に広く用いる。
「狭」 解字:形声。意符の犬(いぬ)と、音符の夾とから成る。もと、陜の俗字。「せまい」意。
「」 解字:形声。意符の石(いし)と、音符の夾(はさむ意)とから成る。岩石にはさまれた所の意。
「莢」 解字:形声。意符の艸(くさ)と、意符と音符を兼ねる夾(両側からはさむ意)とから成る。中に実をはさみもつ外皮、「さや」の意。
「筴」 解字:形声。意符の竹(たけ)と、意符と音符を兼ねる夾(はさむ意)とから成る。物をはさむ竹製のもの、「はし」の意。
「峽」 解字:形声。意符の山(やま)と、意符と音符を兼ねる夾(両脇からはさむ意)とから成る。山が両脇から挟んでいる谷間の意。
「鋏」 解字:形声。意符の金(金属)と、音符の夾(はさみ持つ意=挾)とから成る。金型を持つための金属製の道具、かなはしの意。

「匧」 解字:題字なし。
「愜」 解字:なし。

***** 終了 関連する辞書の解字 *****



3.「奇」の解読と展開

 「奇」には「めずらしい」という意味と、「曲がった」という意味の二つの流れをその展開から読み取ることが出来ます。

」=「大」+「可」:=おおきい+働く男の人=>大きくて働く男=>めずらしい男=>めずらし=>あやしい
」=「大」+「可」:=男根+できるもの=>曲がっている(が性交の可能な)男根=>曲がったもの=>まがる

」=「イ」+「奇」:=男の仕事+大きくてできる男=>大きくてできる男に関する男の仕事=>仕事をする男の方がたよる=>よりかかる=>よる

」=「奇」+「刂」:=曲がる+かたな=>刃の曲がった刀=>刃の曲がった彫刻刀

「欹」=「奇」+「欠」:=(男根の)めずらしい男+動物的な(口を開ける)男=>めずらしい野生の男=>叫ぶ男=>感動の叫び=>ああ

」=「糸」+「奇」:=いと+曲がったもの=>曲がった糸=>色糸を織り込んだ布=>あやおりの布=>あやぎぬ=>あや
」=「山」+「奇」:=やま+めずらしい=>(海に曲がって飛出した)めずらしい山=>みさき
」=「足」+「奇」:=あし+まがる=>曲がった足=>歩行の不自由なあし=>あしなえ
」=「角」+「奇」:=つの+曲がったもの=>曲がった角=>牛の角
」=「土」+「奇」:=とち+まがったもの=>曲がて突き出す土地=>曲がって突き出したみさき=>みさき
」=「扌」+「奇」:=て+曲がったもの=>手にした曲がったもの=>ひっぱて見る=>ひっぱる=>ひく
」=「犭」+「奇」:=けもの+まがったもの=>曲がったけもの=>?=>去勢した犬
」=「石」+「奇」:=いし+曲がったもの=>曲がって突き出した岩=>曲折する海岸
」=「馬」+「奇」:=うま+めずらしい=>(おとなしくて)めずらしいうま=>人を乗せる馬=>(馬に)乗る


***** 開始 関連する辞書の解字 *****

「奇」 解字:形声。意符の大(人の立っているさま)と、音符の可(一本足の意=踦)とから成る。人が一本足で立つ意、ひいて、「めずらしい」意に用いる。

「倚」 解字:形声。意符の人(ひと)と、音符の奇(よる意=寄)とから成る。身をもたせ掛ける意。ひいて、たのむ用いる。
「剞」 解字:形声。意符の刂(かたな)と、音符の奇(まがる意)とから成る。刃の部分が曲がっている彫刻用の小刀の意。
「欹」 解字:形声。意符の欠(口を開いた形)と、音符の奇(感嘆の言葉の意)とから成る。口から出る感嘆の声の意。
「綺」 解字:形声。意符の糸(いと)と、音符の奇(うつくしい意)とから成る。斜めにあや織りした美しい絹、あや絹の意。
「崎」 解字:形声。意符の()と、音符の奇(意=)とから成る。意に用いる。
「踦」 解字:会意形声。意符の足(あし)と、意符と音符を兼ねる奇(人が一本足でたつ意)とから成る。片足が不自由、あしなえの意。
「觭」 解字:形声。意符の角(つの)と、音符の奇(傾く意=傾)とから成る。左右一対の角の向きが普通と異なっている意。ひいて、牛の角の意に用いる。
「埼」 解字:形声。意符の土(土地)と、音符の奇(湾曲している意=剞)とから成る。湾曲している土地、みさきの意。
「掎」 解字:形声。意符の手(て)と、音符の奇(一本足にする意=畸)とから成る。獣を捉えるとき、手でその一本足を引っ張る意。
「猗」 解字:形声。意符の犬(いぬ)と、音符の奇(切り取る意=割)とから成る。去勢した犬の意。
「碕」 解字:形声。意符の石(がけ、きし)と、音符の奇(曲がっている意)とから成る。曲がっている岸の意。
「騎」 解字:形声。意符の馬(うま)と、音符の奇(またがる意=跨)とから成る。馬の背にまたがる、「のる」意。



4.「奐」の解読と展開

冏-口」=「冂」+「儿」:=からだ+垂れ流す女=>女子の体=>子供の体=>子供(「冂」cf.31、「儿」cf.19)
奐-ク」=「冏-口」+「大」:=子供の体+男=>男と子供
」=「奐-ク」+「ク」:=男と子供+動物=>動物の親子=>大小群がるもの=>大小ちらばるもの

」=「扌」+「奐」:=て+動物の親子=>手に入れた動物の親子=>他のものと取り換える=>かえる
」=「氵」+「奐」:=みず+動物の親子=>水に入った動物の親子=>はなれる=>とけちる=>とける
」=「口」+「奐」:=くち+動物の親子=>動物の親子の口=>なく/さけぶ/よぶ/わめく
」=「王」+「奐」:=宝石+動物の親子=>(大小の)模様の散った宝石=>あやのある宝石
」=「疒」+「奐」:=やまい+動物の親子=>やんだ動物=>やむさま
」=「火」+「奐」:=ひ+動物の親子=>あちこちで燃え上がる火=>あざやか


***** 開始 関連する辞書の解字 *****

「奐」 解字:形声。意符の「奐-大」(女性の陰部)と、音符の??(月のさわりの意)とから成る。女性の月々の変化、毎月の生理の意。借りて、「あきらか」の意に用いる。

「換」 解字:形声。意符の手(て)と、音符の奐(とりかえる意=改)とから成る。手でとりかえる意。ひいて、一般に「かえる」「かわる」意に用いる。
「渙」 解字:形声。意符の水(みず)と、音符の奐(もとに返る意=還)とから成る。氷などがもとの水に返る、「とける」意。
「喚」 解字:形声。意符の口(くち)と、音符の奐(一声で泣きわめく意)とから成る。わめく意。
「瑍」 解字:形声。意符の玉(たま)と、音符の奐(あざやかで美しい意=煥)とから成る。鮮やかな模様のある玉の意。
「瘓」 解字:形声。意符の疒(やまい)と、音符の奐(よぶ、さけぶ意=喚)とから成る。病んで嘆きわめくさま。
「煥」 解字:形声。意符の火(ひ)と、音符の奐(かがやく意)とから成る。火の光り輝く意。


***** 開始 関連する辞書の解字 *****



5.「」の解読と展開

」(リョウ)=「-日-小」+「日」+「小」:=「大」+「ノ」+「ノ」=男の両足
」=「-日-小」+「日」+「小」:=男の両足+ひと+小さい=>両足の小さいひと(女の足)=>小柄な人(女の方)=>小型のもの=>ちさいもの

 「-日-小」は指示の点が人の足の両側にあり、「両足」の意味を示している点に注意してください。「太」が男の股間を示していることと連想がつながります(「太」cf.13)

「」の辞書の解字では「小」の代わりに「火」となった象形が本字とされ、「燎」の字の項で解説されています。

」=「辵」+「」:=あゆみ+小柄な人=>小柄な人の歩み=>はるかな道のり=>はるか
」=「イ」+「」:=男の仕事+女のひと=>女に付き添う仕事=>付け人=>とも=>とのだち
」=「木」+「」:=き+女のひと=>(屋根板を)ささえる木=>たるき
」=「疒」+「」:=+女のひと=>女の病=>いやすもの=>いやす/なおす
」=「目」+「」:=め+女のひと=>女の目=>輝いているめ=>明るく輝く目=>あきらか
」=「口」+「」:=口+小柄な人=>女の口=>甲高い声=>遠くまで届く声
」=「扌」+「」:=てにしたもの+女の人=>(支配する)手下の女=>支配する=>おさめる
」=「忄」+「」:=こころ+女のひと=>女の心=>かしこい=>さとい

」=「火」+「小型のもの」:=小さな火=>かがり火
」=「宀」+「」:=+ちさいもの=>小型のいえ=>役人の家/役人=>小窓の家=>こまど
」=「氵」+「」:=みず+小型のもの=>みずたまり=>続くあめ=>ながあめ
」=「糸」+「」:=いと+小さいもの=>短い紐=>くくる紐=>くくる=>めぐる
」=「犭」+「」:=獣+小型のもの=>小型の獣=>夜の獲物=>夜のかり=>かり
」=「虫」+「」:=むし+小型のもの=>小型の虫=>小型のセミ=>ツクツクボーシ


***** 開始 関連する辞書の解字 *****

「」 解字:象形。柴などをやぐらに組んで、下から燃やすさまにかたどる。柴を焼いて天を祭る意。

「遼」 解字:形声。意符の辵(ゆく)と、音符の(ながい意=)とから成る。長い道のりをゆく意。ひいて、「はるか」の意に用いる。
「僚」 解字:形声。意符の人(ひと)と、音符の(骨折りの仕事をする意=労)とから成る。労働をともにする人の意。ひいて、「なかま」の意に用いる。
「橑」 解字:形声。意符の木(き)と、音符の(つらなる、つづきならぶ意)とから成る。家の棟から軒につらなる木、たるきの意。
「療」  解字:形声。意符の疒(やまい)と、音符の(おさめる意)とから成る。病気をなおす意。
「瞭」  解字:形声。意符の目(みる)と、音符の(あきらかの意)とから成る。ひとみが明らかの意。ひいて「明らか」の意に用いる。
「嘹」  解字:形声。意符の口(くち)と、音符の(遠くまで良く響く音の意=亮)とから成る。はっきり聞こえる音声の意。
「撩」  解字:形声。意符の手(て)と、音符の(おさめる意=療)とから成る。手でおさめる意。
「憭」 解字:形声。意符の心(こころ)と、音符の(あかるい意=瞭)とから成る。心が明るい、「さとい」意。

「燎」 解字:会意形声。意符の「火」と、象形の「-小+火」(柴を焼いて天を祭る意)とから成る。ひいて、「かがりび」の意に用いる。
「寮」  解字:形声。意符の宀(いえ)と、音符の(窓の間の穴の意)とから成る。家屋あるいは穴居の窓の穴の意。同官のものは同一の窓際に座ったことから、ひいて、同僚の意味に用いる。
「潦」  解字:形声。意符の水(みず)と、音符の(ひたす意)とから成る。地面が水浸しになるほど降り続く長雨の意。
「繚」  解字:形声。意符の糸(いと)と、音符の(まとう、まつわる意)とから成る。糸が「まとう」、「まつわる」意。ひいて、「めぐる」、めぐらす意に用いる。
「獠」  解字:形声。意符の犬(けもの)と、音符の(狩をする意)とから成る。犬を使って狩をする意、ひいて、かりの意に用いる。
「蟟」  解字:形声。意符の虫(むし)と、音符の(遠くまで響く鳴き声の意)とから成る。遠く目で鳴き声の響くセミ(ツクツクボーシ)の意。

***** 終了 関連する辞書の解字 *****

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【2007/07/23 12:15】 | 漢字解読3 | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) |

「Y」の追求9 /57

「人」の解読(その4)

 今回から「人」の中の「大」の展開です。第13回では「大=一+人」「夫=二+人」「春-日:=三+人」と「人」を要素として取り出しました。その逆を辿ることになります。


1.「おとこの系譜」

今回、改めて「大」を検討しますが、まず前回に引継ぎ「おとこ」の意味を表す文字の流れを展望します。「大」は辞書では象形となっている点に注意してください(辞書の項参照)。

」象形:=男根を下げた股間=>おとこ
」=「Y」の逆転:=男根を立てたおとこ=>おとこ
丙-冂」=「一」+「人」:=からだ+おとこ=>おとこの体=>おとこ
」=「丙-冂」+「冂」:=おとこの体+からだ=>おとこの体=>おとこ=>?=>ひのえ(=火の兄)

」=「一」+「人」:=からだ+おとこ=>おとこの体=>おとこ
」=「一」+「人」:=一番+男根を立てた男=>一番大きい男根の男=>おおきい男根=>おおきい

 「大」は以下に紹介する展開からその意味に「おとこ」「おおきい」の二つの意味を読み取ることが出来ます。

 「大」は前回紹介した「丙-冂:=おとこ」と比べて「一」の位置が下にずれています。そして文字の形が「男が両手を広げた形」となっており、イメージと意味が一致する傑作となっています。

「大」の展開が非常に多く、「おとこ」の意味で使われた期間が他の「おとこ」の意味の文字に比べ格段に長かったであろうと考えられます。


)」=「大」+「十」:=おとこ+男根=>男根を持つおとこ=>おとこ=>進取するもの=>命を掛けるもの=>命をささげることを本望とするもの=>男のもと=>もと
」=「夲」+「廾」:=おとこ+垂れ流すもの=>おとこ=>(動物的に)うごきまわるもの=>動き回る

 「本」の俗字として「夲」が解説されていますが、逆に「夲」が元で「本」に変形したと考えられます。「大」の中に読み取れる「おとこ」の意味は「奔」の文字の中に受け継がれているからです。

 最後の少なくとも「奔」の字が使われた時代まで、男の理性は目覚めてはおらず、猿、熊、犬、馬と同じレベルです(哺乳類では猿、熊、イルカが、鳥類ではカラスが賢い)。

 余談ですが、輪廻による人間の完成を目標とするヒンズー教では、理性の目覚める6歳ごろ以前に死亡すると葬儀をしないようです。


***** 開始 関連する辞書の解字 *****

「大」 部首解説:これを部首にして、人が立った状態に関する意、または、大きい意などを表す文字ができている。字形の上からこの部首に置かれた文字も多い。
解字:象形。大きな青年の男子が正面を向いて、両手両足を広げた立っているさまにかたどる。普通と違った人体の形から、「おおきい」意に用いる。
「夲」 解字:会意。意符の人(ひと)と、意符の十(十人)とから成る。十人の力を合わせたほど、速く進む意。のち、もっぱら、本の俗字とした用いられる。
「本」 解字:象形。木の幹や根の形にかたどる。「設文解字」は木と丁(=下)との会意字とみる。木の幹根、根もとの意。ひいて、「もと」の意に広く用いる。
「奔」 解字:金文は象形。左右の手を振って足を広げたさまと、三つの足跡の形とで走るさまにかたどる。篆文は形声。意符の??(人が首を曲げている形)と、音符の「奔-大」(急ぐ意)とから成る。ともに、急いで手を振り振り、大またに急いで手を振る意。ひいて、走る意に用いる。

***** 終了 関連する辞書の解字 *****



2.「天」の解読と展開

」=「一」+「大」:=上にあるもの+大きいおとこ=>大きい男のうえ=>そら=>てん
」=「天」+「虫」:=天の虫=>白い糸を出す虫=>かいこ

「天」の第一画は指示のようです。また「夫」は「二」と「人」の結合であり「一」と「大」の結合ではありません(cf.13)。
「天」は次の「矢」と比べ「大」の横の一画が長い点に注意してください。


***** 開始 関連する辞書の解字 *****

「天」 解字:象形。人の体を正面から見て、特にその頭部をはっきりさせたさまにかたどる。人のてっぺんにある頭の意。ひいて、「そら」の意に用いる。一説に象形指示で大(おとな)の頭部を強調して大きく書いて脳天を表し、転じて、頭上に広がる空、また、自然の意に用いるという。
「蚕」 解字:形声。意符の虫(むし)と、音符の天(のびる意=延)とから成る。みみずの意。「蚕」の旧字「蝅」が「かいこ」の意。

***** 終了 関連する辞書の解字 *****



3.「矢」の解読と展開

矢-ノ」=「一」+「大」:=上の部分+男根=>男根の先にあるもの=>飛出すもの=>射精=>精液=>陰の極
」=「ノ」+「矢-ノ」:=特別な+飛出すもの=>特に飛出すもの=>や

 「矢」の意味と字形が次のどちらの解読も成立しそうです。しかし、「飛出すもの」という意味が出てこないので正解ではありません。「矢」は辞書では象形となっている点に注意してください。
「矢-ノ」の形は、設文解字にも康煕字典にもまったく現れていません。「奏」の字も辞書では全体が象形と説明されています(何の象形とされているかは、下の辞書の解説を参照)。

「矢」=「乞-乙」+「大」:=若いおとこ+おおきい男根=>大きい若い男の男根=>つきだすもの
「矢」=「气-乙」+「人」:=若いおとこの体+男根=>若い男の男根=>つきだすもの


 「矢」はこれまで解読せずにそのまま意味だけを使ってきました。意味と形が一万年以上たっても変わらない、これが象形文字の特徴です。だからこの解読の冒険が出来るのです。

 「矣」とその展開については第14回を参照、また「知」は第39回を、「矯」は第40回をそれぞれ参照ください。

」=「疒」+「矢」:=やまい+や=>矢のやまい=>射られた病=>(多量出血で)すぐ死亡する>はやい
」=「や」+「とり」:=やのとり=>矢のように飛ぶとり=>キジ
」=「矢」+「豆」:=や+あたま=>頭を狙う矢=>みじかい矢=>みじかい(「豆」はcf.47)

 「きじ」は大型の鳥ですが、羽型はセキレイやツバメに近く矢のように飛びます。「短い矢」からは衣に隠す小型の弓が連想できます。


族-方」=「乞-乙」+「矢」:=>若い男+や=>矢を持つ男子=>弓を持つ男子
」=「方」+「族-方」:=動き回る+矢を持つ男子=>弓を持った男子が動き回る所=>部族内=>ぶぞく=>ぞく


」=「春-日」+「矢-ノ」=三番目の男(=>穏やか)+飛出すもの=>穏やかに発っするもの=>かなでるもの/もうす=>みなで合唱する=>あつまる(再掲「春-三」cf.13)
」=「氵」+「奏」:=みず+穏やかに出るもの=>出航するふね=>船着場=>みなと
「轃」=「車」+「奏」:=くるま+あつまる=>車の輻があつまる=>あつまる

 「矢-ノ」の意味は「癸(発):=とびだすもの」の字で確認したいのですが「ハツガシラノ」の解読の所で紹介します。皆さんも「ハツガシラノ」意味を考えておいてください。


***** 開始 関連する辞書の解字 *****

「矢」 部首解説:これを部首にして矢の種類・性質などに関する文字ができている。
    解字:象形。鏑(やじり)と栝(ためぎ)と矢竹により、やの形にかたどる。真っ直ぐに飛ぶやの意。

「疾」 解字:会意形声。意符の疒(やまい)と、意符と音符を兼ねる矢(やの意)とから成る。矢に射られて床に就く意。ひいて、「やまい」の意に用いる。
「雉」 解字:形声。意符の隹(とり)と、音符の矢(ぬいとりの意=黹)とから成る。羽がぬいとりのように美しいとり、「きじ」の意。
「短」 解字:形声。意符の矢(ものさし)と、音符の豆(ちいさい意=侏)とから成る。背丈が小さい意。ひいて、「みじかい」意に用いる。
「族」 解字:形声。意符の矢(や)と、音符の「方+人」(とがる意=尖)とから成る。とがった矢、矢じりの意。借りて、「やから」などの意に用いる。

「奏」 解字:象形。いけにえの動物の胸や腹を解剖して風雨の神に供え、肉が脱落して白骨となった形にかたどる。神に生贄を供える意。ひいて、「もうす」「かなでる」意に用いる。
「湊」 解字:形声。意符の水(みず)と、音符の奏(あつまる意=「轃)とから成る。みずが集まる意。ひいて、「みなと」の意に用いる。
「轃」 解字:形声。意符の車(くるま)と、音符の奏(あつまる意)とから成る。車の輻がこしきに集る


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4.「夷(えびす)」の解読と展開

 「夷(えびす)」には二つの意味の流れがあります。

」=「大」+「弓」:=おとこ+ゆみ=>弓を持つ男=>(未開部族を)ほろぼす=>たいらげる
」=「大」+「弓」:=おとこ+ゆみ=>弓を持つ男=>未開部族=>部族外者=>異家系者=>その他のもの
」=「氵」+「夷」:=みず+弓を持つ男=>鼻水を垂らす未開部族=>はなみず
」=「女」+「夷」:=おんな+異家系の=>異家系の女=>おば
」=「口」+「夷」:=くち+未開部族の=>未開部族の言葉=>わめく言葉=>わめき声(設文解字)
」=「月」+「夷」:=にく+その他のもの=>背中の肉=>背肉(康煕字典)
」=「夷」+「鳥」:=その他のもの+とり=>その他の鳥=>やまどり(康煕字典)


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「夷」 解字:会意形声。意符の弓(巻きつけた糸の形)と、意符と音符を兼ねる矢(やの意)とから成る。糸を巻きつけた、いぐるみの短い矢の意。借りて、「たいらげる」「えびす」などの意に用いる。
「洟」 解字:形声。意符の水(みず)と、音符の夷(鼻をかむ意)とから成る。意に用いる。
「姨」 解字:形声。意符の女(おんな)と、音符の夷(ひとしい、同等の意=對)とから成る。母と同じ腹から生まれた姉妹、「おば」の意。
「咦」 解字:見出しなし。

「胰」 解字:見出しなし。
「鴺」 解字:見出しなし。

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5.「奄」の展開

 今回「奄」の展開を解読して、以下に示すように新たに「かくれる」意味が見つかったので、それを補充します。

」=「大」+「奄-大」:足が曲がって伸びた男の体=>纏足(てんそく)の男=>部族に止まる男=>長くとどまる=>ながく、ともに、いこう(再掲/cf.9)
」=「大」+「奄-大」:足が曲がって伸びた男の体=>纏足(てんそく)の男=>かくれるもの=>かくれる

」=「口」+「奄」:=くち+纏足の男=>纏足男の言葉=>(性交時の)含み声=>含んだ音=>ふくむ
」=「广」+「奄」:=いえ+纏足の男=>纏足の男の家=>粗末な家=>いおり
」=「扌」+「奄」:=手にする+纏足の男=>扶養する纏足の男=>保護する=>かくまう=>おおう
」=「イ」+「奄」:=部族内の仕事+纏足の男=>纏足の男の仕事=>おれ(自称)
」=「歹」+「奄」:=死体+纏足の男=>纏足の男の死=>病んで死ぬ=>病死=>しぬ

」=「月」+「奄」:=からだ+纏足の男=>纏足男の体=>塩漬けにする体=>塩漬けにした肉=>塩漬けにする
」=「酉」+「奄」:=さけ+かくれる=>酒にかくす=>酒漬けの肉=>塩漬けのもの=>塩漬け
」=「氵」+「奄」:=みず+かくれる=>水にかくれる=>ひたす=>(水に)漬ける

 纏足の男は種馬としての男で、その男に仕える男が「俺」という言葉で「私(も男だ)」と主張する切ない感じが伝わってきます? しかし、「俺」も殗(しぬ)とその末路は塩漬けの肉でした。


」=「山」+「奄」:=やま+かくれる=>(太陽の)かくれる山=>西方の山の名
」=「日」+「奄」:=ひ+かくれる=>日がかくれる=>くらい


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「唵」 解字:形声。意符の口(くち)と、音符の奄(覆い隠す意=掩)とから成る。口で覆い隠す、口に「庵」 解字:形声。意符の广(いえ)と、音符の奄(おおう意=掩)とから成る。草やかやなどで覆っただけの「いおり」の意。
「掩」 解字:形声。意符の手(て)と、音符の奄(おおう意=覆)とから成る。手で覆い隠す意。
「俺」 解字:形声。意符の人(ひと)と、音符の奄(おおう意=掩)とから成る。人をすっぽり覆うことからおおき意。のち、自分を大げさに言う際の自称、「おれ」に意に用いる。
「殗」 解字:形声。意符の歹(死)と、音符の奄(やむ意=)とから成る。病んで死ぬ意。
「腌」 解字:形声。意符の肉(にく)と、音符の奄(つける意=淹)とから成る。塩や酢で漬けた肉や魚の意。
「醃」 解字:形声。意符の酉(しる)と、音符の奄(ひたす、つける意=淹)とから成る。塩漬けにした漬物の意。
「淹」 解字:形声。意符の水(みず)と、音符の奄(ひたす意=醃)とから成る。水に浸す、漬ける意。
「ふくむ」意。

「崦」 解字:形声。意符の山(やま)と、音符の奄(かくれる意=晻)とから成る。日の隠れる山の意。
「晻」 解字:形声。意符の日(ひ)と、音符の奄(おおう意=掩)とから成る。太陽が雲などに覆われて暗い意。

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6.その他

 まだ、「大」の展開は「因」「奇」など続くのですが、既に紹介したものと、比較的その展開の少ない物を今回の最後にまとめます。

 以下「大」の変形の解説は第13回を参照してください。
「犭」「犬」「太」「夭」(「呑」の展開cf.40)


」=「大」+「弓-コ+二」:=おおきい+曲げた二本足=>大きく曲げた二本足=>大きくまたいだ足=>誇張したうごき=>おおげさ=>ほこる(更新再掲cf.27)
「跨」「洿」「袴」「刳」「胯」「誇」については第27回を参照してください。

奚-爪」=「幺」+「大」:=おすがいない+大きいもの=>おすの分からない大きいもの(再掲cf.49)
以下「奚」「雞」については第49回を参照してください。


」(シュン)=「大」+「隹」:=おおきい+大きい鳥=>大きな鳥(「隹」cf.33)
」=「奞」+「田」:=おおきなとり+うむもの=>大きな鳥がもたらすもの=>ふるいたつ=>ふるう

」=「大」+「圭」:=男の男根+男達=>男達の男根=>かぶさり来るもの=>かぶさるもの=>男のふともも=>ふともも=>またぐら


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「奮」 解字:会意。意符の田(た)と、意符と音符を兼ねる奞(鳥がはばたく意)とから成る。鳥が羽ばたき田から飛び立つ、「ふるう」意。

「奎」 解字:形声。意符の大(人)と、音符の圭(ひらく意=開)とから成る。人が両足をひらいたままの間の意。また、両足を開く意。

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【2007/07/07 12:36】 | 漢字解読3 | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) |
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 このブログは漢字の解読を紹介します。従来、部首はほとんど象形とされていますが、部首である「用」「角」「車」「里」「鬼」「竜」「魚」「黄」は部首「田」を含んでいます。  「田」を含む部首を「田」から派生した文字と説明しようとする探検です。

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