象形文字の秘密
漢字の解読

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「Y」の追求5 /53

「Y」から「亠」へ(その3)

 今回は「亠」(なべぶた)の最終回です。

1.「亠+回」の解読

 「亠+回」は現在「亶」「稟」「啚」の三種があり、「稟」にはその変形「禀」があります。まずの辞書の内容から入ります。そして三者に共通な「亶-旦」から解読に入ります。

「亶」 解字:形声。意符の「亶-旦」リン(廩<米倉>の原字。穀物を集め積んで置く所)と、音符の旦(おおい意)とから成る。積んだ穀物が多く、「ゆたか」の意。転じて「まこと」の意に用いる。
「稟」 解字:形声。意符の禾(こめ)と、音符の「亶-旦」リン(米倉)とから成る。政府が与える米蔵の米、扶持米の意。
「啚」 解字:なし(音は「ヒ」)。


亶-旦」=「亠」+「回」:=かくす+まわす=>隠れて回るもの=>陰で回るもの
」=「亶-旦」+「旦」:=隠れて回るもの+太陽=>隠れて回る太陽=>陰で回るもの=>腸(特に大腸)
」=「亶-旦」+「禾」:=隠れて回るもの+あわ=>隠れて回る粟=>裏取引の粟(賄賂)=>わたす/うける/さずかる
」=「口」+「亶-旦」:=くち+陰で回るもの=>陰で回る口=>うわさ=>評判>おしむ言葉=>おしむ
(注:この意味「おしむ」は「設文解字」からの引用)

 「啚」には現代的には「クチコミ」とも読ませてもいいようです。

 「禀」は解読しようとしても、意味が取れません。「稟」の変形としてのみあるようです。草書体では「禾」の第一画を、右から書き始めるか、左から書き始めるかは一般的に書く人の好みで、好きな方が採用されます。



2.「亶」の展開

 今回から各展開の部分が前に戻らず理解できるように、できるだけ元の解字要素を繰り返して入れることにします。

亶-旦」=「亠」+「回」:=かくす+まわす=>隠れて回るもの=>陰で回るもの
」=「亶-旦」+「旦」:=隠れて回るもの+太陽=>隠れて回る太陽=>陰で回るもの=>腸(特に大腸)

」=「イ」+「亶」:=男の仕事+陰で回るもの=>裏取引の仕事=>躊躇する動き=>気の進まない歩み
」=「女」+「亶」:=おんな+陰で回るもの=>(指揮者の意思を)伝え回る女=>あでやかな女
」=「亶」+「毛」:=陰で回るもの+毛=>陰に巡る毛=>毛織物=>もうせん
」=「魚」+「亶」:=さかな+陰でまわるもの=>陰でまわる魚=>たうなぎ

」=「衤」+「亶」:=ころも+陰で回るもの=>下に巻く衣=>ハラマキ=>ハラマキ姿になる=>はだぬぐ
」=「辵」+「亶」:=あし+陰で回るもの=>道に迷ってぐるぐる回る=>行き悩む
」=「食」+「亶」:=たべもの+陰で回るもの=>陰で回し(て煮た)食べ物=>かゆ
」=「土」+「亶」:=つち+陰で回るもの=>(賢者の周りの)近づき難い範囲=>はばかる=>はばかる範囲を区切ったもの=>土で盛り上げた所=>祭壇=>だん
」=「扌」+「亶」:=両腕+陰で回るもの=>陰で手回したもの=>独り占めしたもの=>ほしいまま
」=「木」+「亶」:=き+陰で回るもの=>縞模様の木目が回る木=>紫檀

」=「虫」+「亶」:=むし+腸=>腸のような虫=>みみず
」=「月」+「亶」:=からだ+腸=>はら=>腹を見せる=>肌脱ぎになる
」=「羊」+「亶」:=ひつじ+腸=>羊の腸=>なまぐさい


***** 開始 関連する辞書の解字 *****

「儃」 解字:形声。意符の人(ひと)と、音符の亶(ゆったりとゆとりがある意)とから成る。人の、そろそろとして足の進まない意。
「嬗」 解字:形声。意符の女(おんな)と、音符の亶(姿態が色めき美しい意=婉、)とから成る。くねくねと姿態のあでやかな女の意。
「氈」 解字:形声。意符の毛(け)と、音符の亶(指先でよりをかける意=撚)とから成る。指先でよりをかけて作った毛織物の意。
「鱣」 解字:形声。意符の魚(さかな)と、音符の亶(くねくねまわる意)とから成る。くねくねうねる魚の意。たうなぎ/ちょうざめ

「襢」 解字:形声。意符の衣(ころも)と、音符の亶(肌ぬぐ意=但、袒)とから成る。肌脱ぐ意。
「邅」 解字:形声。意符の辵(ゆく)と、音符の亶(ゆきなやむ意)とから成る。行き悩んで進まない意。
「饘」 解字:形声。意符の食(たべもの)と、音符の亶(かゆの意)とから成る。「かゆ」の意。
「壇」 解字:形声。意符の土(つち)と、音符の亶(小高い意)とから成る。土を小高く盛ったものの意。ひいて、高い場所の意味に用いる。
「擅」 解字:形声。意符の手(て)と、音符の亶(独占する意)とから成る。独り占めにする意。
「檀」 解字:形声。意符の木(き)と、音符の亶(よい意=善)とから成る。よい木の意、檀類の木。

「蟺」 解字:形声。意符の虫(むし)と、音符の亶(くねくねさせる意)とから成る。からだをくねくねさせるむし、みみずの意。
「膻」 解字:形声。意符の肉(からだ)と、音符の亶(ぬぐ意)とから成る。肌脱ぎになる意。
「羶」 解字:形声。意符の羊(ひつじ)と、音符の亶(なまぐさい意)とから成る。羊の生臭い匂いの意。ひいて、「なまぐさい」意に用いる。

***** 終了 関連する辞書の解字 *****



3.「稟」の展開

亶-旦」=「亠」+「回」:=かくす+まわす=>隠れて回るもの=>陰で回るもの
」=「亶-旦」+「禾」:=隠れて回るもの+あわ=>隠れて回る粟=>裏取引の粟(賄賂)=>わたす/うける/さずかる

」=「土」+「稟」:=つち+陰で回る粟=>受けた粟を蓄える土壁=>粟の倉=>食料倉
」=「广」+「稟」:=いえ+うけるもの=>受けた粟を蓄えるいえ=>粟の倉=>米倉
」=「忄」+「稟」:=こころ+陰で回る粟=>賄賂を扱う心=>びくびくするこころ=>おそれる
」=「木」+「稟」:=き+陰で回るもの=>陰で回る木=>屋根の横木

 「檁」は「設文解字」にはなく、意味は「康煕字典」を参考にしました。


***** 開始 関連する辞書の解字 *****

「壈」 解字:会意形声。意符の土(つち)と、意符と音符を兼ねる稟(こめぐらの意)とから成る。土蔵造りの米蔵の意。
「廩」 解字:会意形声。意符の广(いえ)と、音符と音符を兼ねるの稟(こめぐらの意)とから成る。こめぐらの意。
「懍」 解字:形声。意符の心(こころ)と、音符の稟(ぞっとする意=凛)とから成る。心に「おそれる」意。
「檁」 解字:なし。

***** 終了 関連する辞書の解字 *****



4.「啚」の展開。


亶-旦」=「亠」+「回」:=かくす+まわす=>隠れて回るもの=>陰で回るもの
」=「口」+「亶-旦」:=くち+陰で回るもの=>陰で回る口=>うわさ=>評判=>おしむ言葉=>おしむ
」=「口」+「啚」:=かこう+うわさ=>惜しいものを囲う=>記録に残す=>図に残す=>ず/え
」(音はヒ)=「啚」+「阝」:=うわさ+有機的な多量のもの=>多くの(悪い)うわさ=>いやしむ

 「図」は「圖」の省略形で、「圖」は繁体字として現在も台湾で使われています。

 「啚」のうわさは元々良いうわさで、特に「圖」は良いうわさ、「鄙」は悪いうわさと枝分かれしています。


***** 開始 関連する辞書の解字 *****

「圖」(図) 解字:形声。意符の口(土地の区域)と、音符の啚(わける意)とから成る。自分や他人の土地を分ける図面の意。のち、ものの形象を写す意に用いる。
「鄙」 解字:会意形声。意符の邑(集落)と、音符と意符を兼ねる啚(米倉の意)とから成る。米倉のある郊外の集落、小村の意。ひいて、「ひな」「いやし」の意に用いる。

***** 終了 関連する辞書の解字 *****



5.「旡」の解読と展開

 「旡」「既-の旁」に関しては、正式に「旡」が題字とされており「既の旁」はその変形となっています。
 「既の旁」をここでは取り上げますが「尢」(第51回参照)から始め、ついでに解読の欠けていた「无」を追加しておきます。まず辞書の説明から確認します。

「旡」 解字:象形。ひざまずいた人が、十分に飲食し尽くしていいづまる形にかたどる。十分に食べつくして息詰まる意。
「无」(音は「ブ」) 解字:象形。足なえの脛の曲がった形にかたどる。天の終画が曲がって書かれたもの。曲がった脛の意。借りて、「ない」意に用いる。

 「旡」は元の「既の旁」にくらべ、二画目と三画目が一画に融合しており、これを融合した形の「L:=女の徳=>女」で解読しようとしてもうまく意味が取れません。

 「」=「ナ」+「L」:=ころも+女(の徳)=>徳のある女の衣=>女の衣(「L」は第19回参照)
」=「一」+「尢」:=部分+女の衣=>衣の上の部分=>衣の首(頭)=>上部の(頭が)ないもの=>ない

 「既の旁」は縦斜めの画が上に突き出していないと、前回の「牙」のように「なべぶた」の位置が下にずれていると解釈することができません。上の「亠」が上下逆転して付いていると考えるとうまく解読できるのです!

既の旁」=「亠」(上下逆転)+「尢」:=隠すもの+女の衣=>女の衣を隠す=>すでに隠したものを隠す=>既に隠したもの=>すでに
既の旁」=「亠」(上下逆転)+「尢」:=隠すもの+女の衣=>女の衣を隠す=>すでに隠したものを隠す=>余計な事をする=>余計なこと/余分なもの


 「既」には以下の解読で示すように「すでに」と「余分な」の二つの意味の流れが読み取れます。「既」自身を解読するために、少し横道にそれて検討します。

既の偏」=「日」+「ム」:=ひと+(女性器が)ない=>女性器のないひと=>貴族の男=>高貴な男=>普通の男
」=「既-既の旁」+「既の旁」:=高貴な男+衣を隠す女=>高貴な男+着飾った女=>すでに関係を持つ男女=>すでに関係する=>すでに

 「既」の偏が「皀」に変形したものと、「漑の中央部」に変形したものがあります。「日:=指揮者=>素晴らしい女=>普通の女」から一時代後に「白:=特別に素晴らしい女」が派生しているので両者の混同は不思議ではありません。また、「ム」と「ヒ」も同意であり、この両者の混同にも不思議がありません。

 「漑-氵-既の旁」の下の部分は少し意味が異なりますが、やはり男に関する意味を持ちます。この解読は横道にそれすぎるので、後述します。

 以上は男の智恵が向上し、尊敬される男に付加されるようになった「日」や「白」です。初期の時代には尊敬に値する男がいなかったので、「日」が「ム:=女性器もしくは智恵のないもの」と結びつくことは考えられなかったと思われます。

 はじめ「既-の旁」だけで「すでに」の意味があったのに、後代になり「旡」と混同し意味がずれてしまったので、元の「すでに」に「既の偏」を加えたと考えられます。

」=「木」+「既」:=き+余分な=>余分を落とす木=>ますかき(升に盛り上がるものを平らにならす棒)=>でこぼこをならすもの=>丸める=>おおむね
」=「忄」+「既」:=こころ+余計なこと=>心の余計なもの=>なげくこと=>なげく
」=「口」+「既」:=くち+余計なこと=>余計な言葉=>口にしなくてよい言葉=>ぼやく=>なげく
」=「氵」+「既」:=みず+余計なもの=>余分な水=>手を洗う=>手に注ぐ=>そそぐ 
」=「扌」+「既」:=て+余分なもの=>てにあまるもの=>手に注がれる水=>そそがれあふれる水=>そそぐ
」 =「艸」+「既」:=くさ+余計なもの=>余計な草=>生い茂る雑草=>草の多いさま
」=「广」+「既」:=小屋+余計なもの=>小屋が余計なもの=>馬小屋=>うまや

 「厂」には小屋の意味がありませんから、「厩」は「廐」の混同で生まれたと思われます。また、馬はものの下をくぐって通る習性がありませんから、馬の肩の高さの横木一本で囲うことができます。


***** 開始 関連する辞書の解字 *****

「概」 解字:形声。意符の木(き)と、音符の既(こすって平らにする意)とから成る。とますの上をこすって平らにする、とかきの意。ひいて、量を測る意に用いる。
「慨」 解字:形声。意符の心(こころ)と、音符の既(激して高ぶる意=忼)とから成る。心が激して高ぶる意。ひいて、なげく意に用いる。
「嘅」 解字:形声。意符の口(こえ)と、音符の既(つまる意)と声を詰まらせえて嘆く意。慨に同じ。

「漑」 解字:形声。意符の水(みず)と、音符の既(そそぐ意=洎)とから成る。意に用いる。
「摡」 解字:形声。意符の手(て)と、音符の既(そそぐ意=漑)とから成る。手に水をそそぐ意。
「蔇」 解字:形声。意符の艸(くさ)と、音符の既(密生する意)とから成る。草が密生して多い意。

「廐」 解字:なし(「廏」の解説)。

***** 終了 関連する辞書の解字 *****



6.「ヰ」の解読と展開

 「ヰ」はまったく素性が消えています。その展開である「舛」「韋」などにありますが、その詳細はどこにも見当たりません。
 「ヰ」は「粦」(リン)を含む文字が多いのでこれを手がかりに解読を進めます。

 これまでの知識から、「ヰ」「舛」は次のようになります。

」=「亠」+「十」:=隠すもの+男=>前を隠した男=>すぐれた男=>すぐれたもの
」=「夕」+「ヰ」:=かたむいた体+すぐれたもの=>反抗する優れた男=>傾いて優れた(輝く)もの=>たがで止めた傾いた木=>傾いた木枠の容器=>ます(「夕」については第42回参照)
」=「木」+「舛」:=き+反り返る男=>反り返る男達=>斜め棒を組んだもの=>ます

 「ヰ」は「既の旁」と同じく「なべぶた」の位置が下にずれています。「舛」は「桝」を意識して解読しました。


 「粦」ですが、「鱗」「隣」の字から「粦」には直感的に「たくさんのものが寄り集まった」意味が読み取れます。そうです、お米の稲穂を連想すれば「粦:=稲穂の実=>たくさんの寄り集まり」の筋が見えてきます。

 そこで、「舛」と結合し、「粦」の展開から読み取れる意味を加えて整理すると、次の解読が完成します。

」=「米」+「舛」:=こめ+傾いたもの=>米の傾いた(素晴らしい)もの=>実って傾く稲穂=>稲穂の実(シャラシャラいう音)=>(小さく)たくさん寄集ったもの

」=「魚」+「粦」:=さかな+たくさん寄集まるもの=>うろこ
」(「」)=「粦」+「邑」:=たくさん寄集まるもの+有機的なたくさんのもの=>(女達の)より集まるところ=>家の寄り集まり=>近隣住居=>となり
」=「石」+「粦」:=いし+たくさんの寄り集まり=>(薄くはがれる)雲母
」=「火」+「粦」:=ひ+たくさん寄集まるもの=>たくさん集まる火=>おにび
」=「忄」+「粦」:=こころ+たくさん寄集まるもの=>心にしばしば浮かぶ情=>あわれむ心=>あわれむ
」=「やま」+「粦」:=やま+たくさん寄集まるもの=>たくさんの山々=>深山

」=「辵」+「粦」:=あし+(小さく)たくさん寄集ったもの=>小刻みな歩み=>ゆきなやむ=>なやむ
」=「氵」+「粦」:=みず+輝くたくさん寄集まるもの=>きらきらする水=>清い水=>いわしみず

」=「車」+「粦」:=くるま+シャラシャラいう音=>がらがるいう車

」=「馬」+「粦」:=うま+たくさんの寄り集まり=>まだらのある馬=>まだら馬
」=「鹿」+「粦」:=しか+たくさん寄せ集まるもの=>斑点を持つ鹿=>大きな雄の鹿

」=「目」+「粦」:=め+斜めの良いもの=>斜めの視線=>鋭い視線=>鋭い眼光

」=「扌」+「粦」:=て+稲穂=>手にした稲穂=>たすかる(「設文解字」に解字にはなし、康煕字典による)


***** 開始 関連する辞書の解字 *****

「ヰ」 解字:題字なし。
「舛」 解字:題字なし。
「桝」 解字:字源未詳。
「粦」 解字:なし(「炎+舛」の解説)。

「鱗」 解字:形声。意符の魚(さかな)と、音符の粦(つらなっている意=連)とから成る。魚の表皮につらなり並んでいるもの、「うろこ」の意。
「鄰」(「隣」) 解字:形声。意符の邑(集落。のち、阜)と、音符の粦(つらなる意=連)とから成る。集落の互いに連なる家、「となり」の意。
「磷」 解字:形声。意符の石(いし)と、音符の粦(薄く重なる意=鱗)とから成る。薄く重なった鉱石、雲母の意。
「燐」 解字:形声。意符の火(ひ)と、意符と音符を兼ねる「炎+舛」(粦は変わった形。おにびの意)とから成る。おにびの意。粦の後にできた字。
「憐」 解字:形声。意符の心(こころ)と、音符の粦(もつれ絡まる意)とから成る。心にもつれからまる、「あわれむ」意。
「嶙」 解字:形声。意符の山(やま)と、音符の粦(連なる意=鱗)とから成る。山が重なり連なっている意。

「遴」 解字:形声。意符の辵(ゆく)と、音符の粦(しぶる意=吝)とから成る。ゆきしぶる、行き悩んで進まない意。
「潾」 解字:形声。意符の水(みず)と、音符の粦(うつくしい意=琳)とから成る。水の美しくて清い意。
「轔」 解字:形声。意符の車(くるま)と、音符の粦(きしる意)とから成る。車のきしり轟く意。

「」 解字:形声。意符の馬(うま)と、音符の粦(あや模様の輝く意)とから成る。まだらのあや模様の美しい馬。まだら馬(名馬/伝説上の動物)。
「麟」 解字:形声。意符の鹿(しか)と、音符の粦(つよい意)とから成る。強く大きな鹿の意(伝説上の動物)。

「瞵」 解字:形声。意符の目(め)と、意符と音符を兼ねる粦(青い光の意)とから成る。目の中の青い光、眼光の意。

「撛」 解字:なし(注意:「設文解字」に題字なし、「たすかる」の意は「康煕字典」による)。

***** 終了 関連する辞書の解字 *****

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【2007/04/29 07:28】 | 漢字解読2 | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) |

「Y」の追求4 /52

「Y」から「亠」へ(その2)

1.「市」の解読と展開

 「市」の辞書の解字は代わりに「兮」(ケイ)の説明がされています。また、展開された字の中の「市」もすべて誤り変わった字とされており、まったく素性が隠れています。

」:=おさえる/せいする(第34回参照)
」=「亠」+「巾」:=隠れたもの+せいする=>影で制するもの=>影で統治される所=>まち=>行政の区画

」=「月」+「市」:=からだ+影で支配するもの=>呼吸を支配するもの=>はい
」=「女」+「市」:=おんな+影で支配するもの=>影で支配する女=>年上の女=>長女
」=「木」+「市」:=き+影で支配するもの=>(渋味が甘味へと)味が影で支配されるもの=>かき


***** 開始 関連する辞書の解字 *****

「肺」 解字:形声。意符の肉(からだ)と、音符の市(=??。市は誤り変わった形。中から発する意=排)とから成る。体内の気息を排出する臓器、肺臓の意。
「姉」 解字:形声。意符の女(おんな)と、音符の市(=??。はじめの意=始)とから成る。最初に生まれた女の意。
「柿」 解字:形声。意符の木(き)と、音符の本(市は省略形。あかい意=赤)とから成る。赤い果実のなる木、「かき」の意。

***** 終了 関連する辞書の解字 *****



2.「充-儿」の解読と展開

 「充-儿」の形は辞書にありませんから、「ム」から始めます。

」:=ない(第14回参照)
」=「|+ノ」+「L」:=垂れ流すもの+女の徳=>女の子=>中性のもの=>子供
」=「ム」+「儿」:=(女で)ない+子供=>(女で)ない子供=>男の子
充-儿」=「亠」+「ム」:=隠れたもの+(女性で)ない(中性の)もの=(子宮に)隠れた子供=>胎児
」=「充-儿」+「儿」:=胎児+子供=>生まれ出る子供=>新生児=>月満ちたもの=>みちる

 「充」は「允」と「充-儿」の両方の組み合わせが意味を持ちます。

 「充-儿」:=胎児、に関しての形は、下に示す辞書の解字で、「逆さまに生まれ出る胎児」の象形に捕らえています。解読の意味と形が合致する象形文字の傑作の一つです。

」=「充-儿」+「廾」:=胎児+垂れ流す男=>宿した男児=>すてる
」=「充-儿」+「月」:=胎児+からだ=>胎児の体=>(自然に)大きくなる体=>育つからだ=>そだつ
」=「金」+「充」:=かね+生まれ出るもの=>(中に玉を)宿す金筒=>じゅう
」=「糸」+「充」:=いと+生まれ出るもの=>(繭から)糸の生まれ出る所/いとぐち=>一つになる所=>一つになるもの

 「銃」のできた時代は「充」の意味が忘れ去られた時代だと思われますが、「銃」の中の弾を孕む「充」の意味がみごとに生きています。


流-氵」=「充」+「|」:=生まれ出る子供+落ちる=>落ちる胎児=>流産した胎児=>流れ去る
」=「氵」+「流-氵」:=みず+流れ去る=>水のながれ=>ながれる
」=「石」+「流-氵」:=いし+流れ去る=>くずれる石=>硫黄岩=>いおう
」=「方」+「流-氵」:=あっちこっち+流れ去る=>四方に流れるもの

 「流-氵」に関して、解字は足が「巛」となっている古字が採用されていますが、その意味は「説文解字」からの引用で「異常な状態で唐突に生まれ出る子。また、不幸な子。」となっています。

」=「士」+「一」:=男根+器官=>男根の先の部分=>亀頭=>男の先=>男の先頭=>おう(第21回参照)
」=「士」+「一」:=男根+器官=>男根の先の部分=>亀頭=>たからもの=>宝石(補充)
」=「王」+「流-氵」:=宝石+流れる=>(川に)流れる宝石=>砂金

 「琉」の解読のために「王」を補充しておきます。

***** 開始 関連する辞書の解字 *****

「充」 解字:形声。意符の「充-儿」(赤子が頭から先に生まれてくるときの形)と、音符の儿(そだつ意=伸)とから成る。赤子の体が育つ意。借りて、「みちる」意に用いる。
「弃」 解字:会意。意符の「充-儿」(子供が生まれるときの逆さまの形)と、音符の??(=廾。両手で持つ意)とから成る。生まれたばかりの子供を持っていってしまう、ひいて、「すてる」意に用いる。
「育」 解字:形声。意符の「充-儿」(子供が生まれるときの逆さまの形)と、音符の肉(うまれでる意=乳)とから成る。子供が生まれ出る意。転じて、「そだつ」意に用いる。
「銃」 解字:形声。意符の金(金属)と、音符の充(くち、あなの意=口)とから成る。斧の柄を押し込む穴の意、ひいて、「つつ」の意に用いる。

「統」 解字:形声。意符の糸(いと)と、音符の充(いとぐちの意=緒)とから成る。繭の糸の糸口の意。

「流-氵」 解字:なし(足が「巛」の字の解説)
「硫」 解字:形声。意符の石(いし)と、音符の「流-氵」(とける意=融)とから成る。もろく解けやすい鉱石、「いおう」の意。
「旈」 解字:なし(漢和大字源に見出しなし)
「琉」 解字:形声。意符の王(たま)と、音符の「流-氵」(きらきら光る意=璃)とから成る。きらきら光る宝石の意。


***** 終了 関連する辞書の解字 *****



3.「玄」の解読と展開

 「玄」の解読は「幺」から始めます。まず、辞書の説明です

「玄」= 解字:形声。意符の幺(見えるか見えないかというほど細い糸の意)と、音符の??(=广)とから成る。見えるか見えないかというほど細い糸。転じて、「くろ」の意に用いる。


」=「逆y」+「ム」:=おす+ない=>オスのいない(分からない)もの=>オスメスのないもの(「ム」は第19回参照)

」=「亠」+「幺」:=隠れる+オスメスのないもの=>オスメスがいなく隠れるもの=>(水に)隠れるかめ=>かめ=>水深い所のもの=>奥深いもの/玄妙なもの=>暗黒のもの=>黒
」=「亠」+「幺」:=隠れる+オスメスのないもの=>オスメスがいなく隠れるもの=>(水に)隠れ住むかめ=>かめ=>水深い所のもの=>奥深いもの=>深く繋がるもの=>繋がるもの=>つなぐ

 「玄」には以下の解読で示すように、各文字から滲み出す意味の流れが二つあるようです。

前回「蜻:=虫+隠れた主=>水に隠れる虫=>とんぼ」の例がありましたが、「玄」も水に隠れる亀の意味で、その展開の文字がうまく解読できます。そして、「畜」の字から「家畜(凶作時の非常食)」の始まりと推測できます。

」=「玄」+「田」:=かめ+うむもの=>亀のもたらすもの=>凶作の備え=>たくわえ
」=「日」+「玄」:=ひ+かめ=>日向の亀=>惑い乱れるさま
」=「火」+「玄」:=火+かめ=>焼いた亀=>焼けて赤く輝く甲羅=>かがやく
」=「疒」+「玄」:=やまい+かめ=>(頭や手足を急に引っ込める)亀の病=>ひきつける病=>ひきつけ
」=「目」+「玄」:=め+かめ=>亀の目=>まぶしそうな目=>まぶしい
」=「虫」+「玄」:=むし+かめ=>(からを持ち)体を縮める虫=>やすで
」=「舟」+「玄」:=ふね+かめ=>舟の左右に亀のように平たく張り出した所=>ふなべり=>げん

」=「口」+「玄」:=くち+奥深いもの=>口の中でつぶやく=>つぶやく
」=「氵」+「玄」:=みず+奥深いもの=>感激した涙=>はらはらと涙の落ちるさま
」=「弓」+「玄」:=ゆみ+つなぐもの=>弓の両端をつなぐもの=>弓のげん

」=「玄」+「玄」:=くろ+くろ=>黒々としたもの
」=「衣」+「玄」:=ころも+くろ=>黒い衣=>正式な礼服=>晴れ着


***** 開始 関連する辞書の解字 *****

「畜」 解字:形声。意符の田(はたけ)と、音符の玄(玄は変わった形。やすむ意=休)とから成る。耕さずに休ませておく田の意。ひいて、田を休ませておくことにより土力を増すことから、「たくわえる」「やしなう」などの意に用いる。
「昡」 解字:形声。意符の日(ひ)と、音符の玄(あかるい意=)とから成る。明るい日光の意。
「」 解字:形声。意符の火(ひ)と、音符の玄(目がくらむ意=眩)とから成る。火の光で目がくらむ、ひいて、「かがやく」意。

「痃」 解字:形声。意符の疒(やまい)と、音符の玄(つるの意=弦)とから成る。筋肉が弦のように引きつる病気の意。
「眩」 解字:形声。意符の目(め)と、音符の玄(ぐるぐるまわる意=旋)とから成る。目がくるくる回る、「くらむ」意に用いる。
「蚿」 解字:形声。意符の虫(むし)と、音符の玄(丸く曲がる意=圏)とから成る。触れると体を丸める虫、「やすで」の意。
「舷」 解字:形声。意符の舟(ふね)と、音符の玄(かぎりの意=限)とから成る。舟のへり、「ふなべり」の意。

「呟」 解字:形声。意符の口(くち)と、音符の玄(大きい意)とから成る。口から出る大きい声の意。注:字義は「つぶやく」。
「泫」= 解字:形声。意符の水(みず)と、音符の玄(ひそかの意=潜)とから成る。水が秘かに流れる意。ひいて、涙が流れる意に用いる。
「弦」 解字:形声。意符の弓(ゆみ)と、音符の玄(かける意=懸)とから成る。弓の両端に懸けるもの、「つる」の意。

「玆」 解字:意符の玄(くろ)二つからなる。ますます黒い意。
「袨」 解字:形声。意符の衣(ころも)と、音符の玄(輝くほど立派な意=)とから成る。立派な衣服、正式な服装の意。

***** 終了 関連する辞書の解字 *****



4.「亢」の解読と展開

「亢」は辞書に解説がないので、直接解読に入ります。

」=「乙」+「|+ノ」:=乙女+紐=>飾紐(地位の象徴)の女=>女首領=>指揮する女=>一般の女=>?=>肘掛 (第18回参照)

」=「亠」+「几」:=隠れる+指揮する女=>隠れた指揮者=>影の指揮者=>反抗するもの=>さからう

同じ逆らう意味でも「亢」は女の反逆、「斤」は男の反逆(第22回参照)です。

」=「イ」+「亢」:=男の仕事+影の指揮官=>影の指揮者の付き人/つれあい=>おごる
」=「扌」+「亢」:=て+さからう=>手で逆らう=>こばむ/ふせぐ
」=「忄」+「亢」:=こころ+さからう=>心が逆らう=>取り乱す=>心がたかぶる=>たかぶる
」=「口」+「亢」:=くち+さからう=>口にさからう=>セキを出すところ=>のど
」=「火」+「亢」:=ひ+さからう=>ひにさからう=>炎に反抗する=>あぶる=>かわく
」=「骨」+「亢」:=ほね+さからう=>骨に逆らう=>肥満体=>肥満したさま

」=「土」+「亢」:=つち+さからう=>土に逆らうもの=>掘り起こしたもの=>あな

」=「氵」+「亢」:=みず+さからう=>水に逆らう=>流れを横切る=>わたる
」=「木」+「亢」:=き+さからう=>さからうき=>川を渡る木=>川に差した(飛び飛びの)くい=>わたる/くい
」=「舟」+「亢」:=ふね+さからう=>(流れに)逆らうふね=>航行する=>わたる

 「杭」に渡る意味があることから、川を渡る最初の工夫は、太い杭(くい)を飛び飛びに川底に差し立てて、その上を渡ったと推測できます。杭の上に横板を渡すのは時代が進んでからでしょう。


***** 開始 関連する辞書の解字 *****

「亢」 解字:象形。??は項(うなじ:衣の上に同じ))と??はのどの形にかたどる。首筋の意。人の首筋は強いので「強項」の語があり、ひいて、たかぶる意に用いる。
「伉」 解字:形声。意符の人(ひと)と、音符の亢(あたる意=衡)とから成る。相当するひと。つれあい。
「抗」 解字:形声。意符の手(て)と、音符の亢(防ぎ対抗する意)とから成る。手で防ぎ当たる意。

「忼」 解字:なし(本字「慷」の説明)
「吭」 解字:形声。意符の口(くち)と、音符の亢(人間の首の形)とから成る。口から通じる首の部分、「のど」の意。
「炕」 解字:形声。意符の火(ひ)と、音符の亢(かわかす意=乾)とから成る。火で乾かす、「あぶる」意。
「骯」 解字:形声。意符の骨(ほね)と、音符の亢(おおきい意=)とから成る。体が大きく太っている意。

「坑」 解字:形声。意符の土(つち、または阜で、大岡の意)と、音符の亢(たかい意=岡)とから成る。高い大岡、高丘の意。借りて、「あな」の意に用いる。

「」 解字:形声。意符の水(かわ)と、音符の亢(わたる意=航)とから成る。川を渡る意。
「杭」 解字:形声。意符の木(き)と、音符の亢(渡る意=航)とから成る。わたる意に用いる。
「航」 解字:形声。意符の舟(ふね)と、音符の亢(よこにする意=横)とから成る。舟を横に二艘並べる意。二艘の舟を横の並べてその上に板をわたし人馬を渡したことから、ひいて、舟で「わたる」意に用いる。

***** 終了 関連する辞書の解字 *****



5.「牙」の解読

「牙」の中に「亠」が隠れていると考えた人がいますか? まず、辞書の説系から入ります。

「旡(无・牙)」 部首解説:これを部首にして食べ飽きる意を表す文字ができているが、数は極めて少ない。「康煕字典」では「无」を部首にしているが、「无」以外はすべて「旡」にしているので改めた。
「无」 解字:象形。足なえの脛の曲がった形にかたどる。「天」の終画が曲がって書かれたもの。曲がった脛の意。借りて、「ない」意に用いる。

 「旡」「无」「牙」の中で「旡」は意味のある解読が得られません。「无」は無理に解読すると以下のようになります。
」=「一」+「尢」:=(上の)部分+女の衣=>衣の頭の部分=>衣を着けない頭部分=>ないところ=>ない

 意味が正確に取れるのは「牙」であり、この形が「旡」に変形したのではないかと考えられます。

牙-ノ」=「亠」+「丁」:=隠す+垂れた男根=>隠された男根
」=「牙-ノ」+「ノ」:=隠された男根+特別な=>特に隠された男根=>口に隠された男根=>きば

」=「牙」+「隹」:=きば+両足を伸ばして飛ぶ鳥=>鳥の(頭の)飾り羽=>みやびな飾=>みやび
」=「牙」+「阝」:=きば+有機的なもの(複数)=>枝分かれした牙を持つもの=>しか=>よこしまなもの=>よこしま
」=「牙」+「阝」:=きば+有機的なもの(複数)=>牙をもてあそぶ巫女=>よこしまなひと=>よこしま
」=「牙」+「鳥」:=きば+とり=>(くちばしが)きばのような鳥=>からす
」=「芽-牙」+「牙」:=くさ+きば=>植物の牙=>芽
」=「口」+「牙」:=くち+きば=>口の中の牙=>犬歯=>はりひろげる
」=「辵」+「牙」:=あし+きば=>きばのあゆみ(うごき)=>噛み付きかかる=>でむかえる=>むかえる
」=「虫」+「牙」:=きば+むし=>草の芽に付く虫=>あぶらむし
」=「山」+「牙」:=やま+きば=>きばのような山=>深山
」=「言」+「牙」:=ことば+きば=>牙のある言葉=>とげのある言葉=>いぶかる
」=「石」+「牙」:=いし+きば=>石の牙=>やじり=>みがく


 「牙」の字では隠すナベブタを下がった位置に配置したデザインの斬新さが注目です。「牙」は五画ですが、ほかの部首と組み合わさると四画となります。

 「邪」は解読が確定していないので、二つの可能性を示しました。

 牙状の器官を多く備えた生き物は「角のある鹿」以外に思いつきません。弓のない時代には、鹿は角と足の速さで捕らえがたい生き物だったようです。

***** 開始 関連する辞書の解字 *****

「雅」 解字:形声。意符の隹(とり)と、音符の牙(からすの鳴き声の意=啞)とから成る。「アーアー」と鳴く鳥、とうがらすの意、借りて、「みやびやか」「つね」の意に用いる。
「邪」 解字:形声。意符の邑(まち)と、音符の牙とから成る。地名。借りて、助字「や」「か」、また、「よこしま」の意に用いる。
「鴉」 解字:形声。意符の鳥(とり)と、音符の牙(からすの鳴き声の意=啞)とから成る。ア、アと鳴く「からす」の意。
「芽」 解字:会意形声。意符の艸(くさ)と、音符の牙(互いにかみ合う意)とから成る。草木の互いに「呀」 解字:形声。意符の口(くち)と、音符の牙(笑う声の擬声音)とから成る。口を笑うように開ける意。
「迓」 解字:形声。意符の辵(ゆく)と、音符の牙(むかえる意=迎)とから成る。行って出迎える意。
かみ合っている新しい「め」の意。ひいて、「めぐむ」意に用いる。
「蚜」 解字:形声。意符の虫(むし)と、音符の牙(草木の芽の意=芽)とから成る。草木の新芽や若芽をかみ食う虫、あぶらむしの意。
「岈」 解字:形声。意符の山(やま)と、音符の牙(大きくうつろで深い意)とから成る。山が大きくうつろで深い意。
「訝」 解字:形声。意符の言(ことば)と、音符の牙(むかえる意=迎)とから成る。出迎えてねぎらいの言葉をかける、転じて「いぶかる」意に用いる。
「砑」 解字:形声。意符の石(いし)と、音符の牙(ものをすり砕く意=磑)とから成る。石をすり砕く意。

***** 終了 関連する辞書の解字 *****



6.「卒」の解読

 「卒」の俗字として「卆」は、康煕字典にはありますが、設文解字には載っていません。まず辞書の説明からです。

「卒」 解字:指示。衣(「亠+从」は変わった形。ころも)と、音符の「|+ノ」(十は変わった形。しるしの形。)とにより衣服にしるしのある意を示す。また、衣を色に染めて、奴隷である印とした染色衣の意。ひいて、この衣を着たしもべ、また、兵士の意に、かりて、「にわか」の意に用いる。一説に会意という。


」=「人」+「人」:=おとこ+おとこ=>男達=>従う男達=>したがう
卒-十」=「亠」+「从」:=隠す+従う男達=>従う男達を隠す=>ばらばらに兵を隠す=>ばらばらにする
」=「卒-十」+「十」:=兵を隠す+おとこ=>ばらばらに兵を隠す男=>兵を掌握する=>ひきいる/掌握する=>率いられるもの=>兵士
」=「卒-十」+「十」:=兵を隠す+おとこ=>ばらばらに兵を隠す男=>兵を操るもの(軍曹)=>急襲するもの=>にわかに

 「卒」は、兵士そのものと、兵をばらばらに隠すこと、ばらばらな兵を掌握すること、急襲すること、という四つの意味の流れを持ちます。

 「卒」の俗字として「卆」がありますが、無理に意味を取ると、
「卆」=「九」+「十」:=完成した女+男=>完成した女とその夫=>最高の夫婦
となりますが、以下に続く「卒」の意味とは関係がなく、「卆」は「卒」の草書体の変形と考えられます。

」=「イ」+「卒」:=男の仕事+兵士=>兵士の世話をする男=>見習い兵=>たすけるもの/せがれ=>たすける
」=「忄」+「卒」:=こころ+兵士=>兵士を率いる心=>苦労の多いもの=>やつれる

」=「扌」+「卒」:=両手+(ばらばらなものを)手でつかむ=>つかむ
」=「日」+「卒」:=ひ+掌握する=>日をまとめとる=>一年分の日=>一周年
」=「月」+「卒」:=からだ+掌握する=>からだを掌握する所=>首筋/うなじ=>もろい所=>もろい
」=「目」+「卒」:=め+掌握する=>正視する

」=「氵」+「卒」:=みず+ばらばらにする=>飛び散るみず=>金属の焼きを入れる=>にらぐ
」=「石」+「卒」:=いし+ばらばらにする=>石をばらばらにする=>くだく
」=「糸」+「卒」:=いと+ばらばらなもの=>ばらばらの糸=>五色のより糸=>えぎぬ/まじる
」=「疒」+「卒」:=やまい+ばらばらになる=>からだがくずれる=>つかれる

」=「言」+「卒」:=ことば+急襲する=>言葉で襲う=>ののしる=>せめる
」=「口」+「卒」:=くち+急襲する=>急襲された口=>叫び声=>おどろく=>?=>なめる
」=「犭」+「卒」:=けもの+急に=>急に飛び出す獣=>にわか
」=「羽」+「卒」:=はね+急な=>急に水に入る鳥=>かわせみ


***** 開始 関連する辞書の解字 *****

「倅」 解字:形声。意符の人(ひと)と、音符の卒(ちいさい意=)とから成る。小者の意。ひいて、添え役の意に用いる。
「悴」 解字:形声。意符の心(こころ)と、音符の卒(細かくくだく意=碎)とから成る。心を細かく砕く、うれえる意。ひいて、「やつれる」意に用いる。

「捽」 解字:形声。意符の手(て)と、音符の卒(あつめる意=萃)とから成る。手で毛髪などをあつめてつかむ意。
「晬」 解字:形声。意符の日(ひ)と、音符の卒(おわる、つくす意)とから成る。一年の日数を尽くす、一周する、一周年の意。
「脺」 解字:形声。意符の肉(にく)と、音符の卒(もろい意=碎)とから成る。柔らかで破れやすい肉の意。ひいて、「もろい」意に用いる。
「睟」 解字:形声。意符の目(め)と、音符の卒(もっぱらの意=粹)とから成る。もっぱらみる、正視する意。

「淬」 解字:形声。意符の水(みず)と、音符の卒(熱した鉄を水に入れたときの音)とから成る。熱したものを水に入れる、「にらぐ」意。
「碎」 解字:なし(「砕」の解説)。
「」 解字:形声。意符の糸(いと)と、音符の卒(五つの美しいいろぎぬを集める意)とから成る。五色の彩を合わせた絹、えぎぬの意。
「瘁」 解字:形声。意符の疒(やまい)と、音符の卒(おとろえる意=衰)とから成る。病み衰える意。

「誶」 解字:形声。意符の言(ことば)と、音符の卒(せめる意=譲)とから成る。言葉で責める意。
「啐」 解字:形声。意符の口(くち)と、音符の卒(急の意=率)とから成る。急な声、驚きしかる声の意。
「猝」 解字:形声。意符の犭(けもの)と、音符の卒(はやい、にわかの意=突)とから成る。犬が突然草の間から走り出して人を追う意。ひいて、「にわか」の意に用いる。
「翠」 解字:形声。意符の羽(はね)と、音符の卒(緑色の意)とから成る。羽の緑色の鳥、「かわせみ」の意。

***** 終了 関連する辞書の解字 *****



7.「哀」の解読

 最後に「哀」です。ついでにこれに似た骨格の「猿-犭」を追加しておきます。まず、辞書の内容からです。

「哀」 解字:形声。意符の口(声をあげる)と、音符の衣(葬式の悲しみに発する声の擬声音)とから成る。葬礼で「あいあい」と悲しみの声を出す意。ひいて、「かなしい」「あわれむ」の意に用いる。
「袁」 解字:形声。意符の止(土は変わった形。ゆく意)と、音符の哀(「哀-亠」は省略された形。曲がる意=宛)とから成る。曲がって遠くへ行く意。遠の原字。借りて、ゆったりとした長い衣の意に用いる


口+(|+ノ)」:=おんな+垂れ流すもの=>垂れ流す女
哀-亠」=「口+(|+ノ)」+「衣-ナ」:=垂れ流す女+男達=>垂れ流す女と男達
」=「亠」+「哀-亠」:=隠れる+垂れ流す女と男達=>垂れ流す女と男達の隠れた部族=>智恵のないもの=>あわれなもの=>あわれ


」=「土」+「哀-亠」:=ひと+垂れ流す女と男達=>垂れ流す女と男の部族=>さる
」=「辵」+「袁」:=あし+さる=>猿の足=>遠くを動き回る=>とおく
」=「口」+「袁」:=かこう+さる=>さるの縄張り=>菜園/果樹園
」=「犭」+「袁」=けもの+さる=>さる

 「園」「遠」の「衣-ナ」の「y」は二画目がなくなっています。

 さるは始め「袁」でしたが、のちの時代に獣偏をつけて「猿」になったと考えられます。


***** 開始 関連する辞書の解字 *****

「遠」 解字:形声。意符の辵(ゆく)と、音符の袁(ながい意=延)とから成る。ながく行く、遠くへ行く意。ひいて、「とおい」意に用いる。
「園」 解字:形声。意符の口(かこう)と、音符の袁(かきの意=垣)とから成る。垣で囲んだ場所、野菜・果樹などの畑の意
「猿」 解字:形声。意符の虫(または犬)と、音符の爰(袁は変わった形。手前に引っ張る。ひいて、「さる」の意に用いる。

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【2007/04/14 15:29】 | 漢字解読3 | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) |
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 このブログは漢字の解読を紹介します。従来、部首はほとんど象形とされていますが、部首である「用」「角」「車」「里」「鬼」「竜」「魚」「黄」は部首「田」を含んでいます。  「田」を含む部首を「田」から派生した文字と説明しようとする探検です。

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