象形文字の秘密
漢字の解読

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「ト」の追求-その20

 今回は「ト」の字です。関連する「止」「歩」「足」「走」もいっしょに辞書の意味を確認します。
「ト」 部首解説:これを部首にして、占いの意を表わす文字ができている。
    字義:うらかた。うらなう。たまわる。
    解字:象形。占いのために、亀の甲羅を裏側から焼いて表面にできた、割れ目の形にかたどる。
「止」 字義:とまる
    解字:象形。左または右の足跡の形にかたどる。足跡、足首などの意。ひいて「とどまる」意に用いる。
「歩」 字義:あるく
    解字:象形。以下、第七画の省略された旧字の解説(左右の足跡が前後に並んでいる形にかたどる)。
「足」 部首解説:これを部首にして、足の状態・動作・部分に関する文字ができている。
    字義:あし
    解字:象形。ひざから下の足の形にかたどる。
「走」 部首解説:これを部首にしてはしる動作・状態に関する文字ができている。
    字義:はしる
    解字:形声。意符の止(「走-土」は変わった形。足跡、また道路を進行する形)と音符の夭(土は誤り変わった形。跳びあがる意)とからなる。

「足」「走」「止」「歩」はいずれも足と足の動作に関係しています。これらは「走」を除いてすべて直接の象形と解説されています。

惑わされずに字の形を見つめてください。四字の中心となる四画の部分の共通な所は「ト」(第二画は水平でも良い)、中心となる残りは「足」と「走」に関しては「ト」の変形で、「止」と「歩」に関しては「横向きのト」です。

 以上の観察から「ト」が片足を、残りがもう一方の片足を表わしていると考えるのは不自然でしょうか?
我々の二本の足は体から枝分かれしていることは事実です。また、我々は既に
「十」:=棒のある体=>男根の体=>男=>針 
を知っています。そこで次のように考えます。特に下の図を参考にしてください。

」=「十の右半分」:=半分になった棒=>枝分かれしたもの=>かたあし
足-口」=「ト」+「ト」:=かたあし+かたあし=>両足=>あし
」=「片足」+「横向きの片足」=>一方を横にした足=>一方を曲げた足=>とまる
注:ちょっと目障りな「口」ですが、解読が後回しになります。

これにより、関連する字が解けてきます。既に解けた「一」:=いち,地面,体   「土」:=座る男=>男,地面   も使います。
」=「土」+「足-口」:=おとこ+あし=>男の足=>はしる
定-ウ冠」=「一」+「足-口」:=体+あし=>動きまわる体
(参考・詳細は後述  定:=家の中で動きまわる体=>住居の決まったひと=>住居が定まる=>さだまる)

延-廴」=「ノ」+「止」:=特別な+止まる=>特別に止まる=>とどまる
」=「一」+「止」:=体+とまる=>止まった体=>従順な態度=>聞き分けの良い態度=>ただしい

 参考までに辞書での「定」と「正」の解字を紹介しておきます。
「定」 解字:意符の宀(いえ)と音符の正(「定-宀」は誤り変わった形、きちんと整える意=整)とから成る。
「正」 解字:象形。足のひざしたと、ふくらはぎと、足もとを合わせた形にかたどる。


「ト」の派生を考えます。「上」と「下」をまず辞書でしらべます。
「上」 字義:うえ
    解字:指示。ある基準となる横棒の上に、それより短い横線(後に縦線となり、更に縦線と横線になった)を書いた形によりそれが基準より「うえ」であることを示す。
「下」 字義:した
    解字:指示。ある基準となる横棒の下に、それより短い横線(後に縦線となり、更に縦線と横線になった)を書いた形によりそれが基準より「した」であることを示す。

辞書の解釈はこじつけ臭いので、自分の感覚を頼りに理解できる繋がりを追いかけます。どうも「ト」は意味の流れにおいても枝分かれしたと考えられます。
」=「十の右半分」:=半分になった棒=>枝分かれしたもの=>枝分かれ=>小枝
」=「ト」+「一」:=枝分かれしたもの+地面=>地上の枝分かれしたもの=>木の枝分かれ=>土のうえ=>うえ
」=「ト」+「一」:=枝分かれしたもの+地面=>地下の枝分かれしたもの=>木の根分かれ=>土のした=>した


 意味が定着するまでに「ト」は更に変化していたようです。
」=「十の右半分」:=半分になった棒=>枝分かれしたもの=>枝分かれ=>小枝=>小枝での占い=>小枝占い=>うらなう


 紀元前数百年前に亀の甲羅で儀式的に行う占いが伝えられていますが、その時代以前の原始的な占いとは、小枝の枝分かれした方を地面に立てて「右に倒れるか、左に倒れるか」で占う単純な「小枝占い」だったと考えられます。

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【2006/07/28 07:05】 | 漢字解読2 | TRACKBACK(0) | COMMENT(1) |

「乙」の追求-その19

「乙」の外堀を埋めましたので、いよいよその「乙」の字そのものの解読に入りましょう。「乙」が二つも使われている「飛」の字の中の「乙」は「一」に対して「L」が立っています。辞書では「乙」と同じく二画とは数えず一画と数え「飛」は九画の部首で、「鳥が羽を張ってとぶ形にかたどる象形」と説明されています。

繰り返しますが「乙」を二画と考えます。そして「乙」を分解します。
「乙」=「一」+「L」

 手掛かりは「」です。辞書の意味を吟味します。
「(礼、禮)」字義:れい。行動規範や様式。真心や心からの扱い。感謝の意を表す贈り物。
      解字:会意形声。旧字は意符の示(かみ)と意符と音符を兼ねる豊(酒を入れる器、さかずきの意)。

「」が「乙」の部首でなく「乙」より画数の多い「示」の部首の中にあるのも変です。
「」の説明の対象となっている「禮」ですが、いままでの検討から「」に変わって説明し「」を直接解説しないためのカムフラージュであることが分かります。「礼」は示偏が筆記により崩れたものであり問題としている旁「つりばり」には影響はありません。

 結局「」の意味の中心は「つりばり」であり、真心や感謝そのものであることが分かります。そこで次のようにまとめて解読できます。
」:=真心や感謝=>(動物に対する)女の要素=>女の徳=>徳
」=「示」+「L」:=示す+真心や感謝=>真心や感謝を示す=>女(だけ)の要素を示す=>女の徳を示す=>徳を示す=>れい
「示」は動詞的要素ですから、「L」は非常に単純な形でかつ抽象的な概念を表現していることに驚かされます。

「L」の応用を考えて正しさを確認しましょう。「儿(ジン)」ですが、まずは辞書の説明です。
「儿」 部首解説:これをもとしてできている字は少なく、主として文字整理の上から設けられた部首。「ひとあし」ともいう。
    字義:ひと
    解字:象形。人の体の背部の屈曲している形にかたどる。

「|+ノ」は既に解読済みですから、「元」も加えて次のように解読できます。
」=「|+ノ」+「L」:=垂れ流す+女の要素=>垂れ流す女=>女の子=>こども(ひと)
」=「二」+「儿」:=に+女の子=>2年目の女子=>2歳児=>元気な子=>育ち始め=>はじめ=>めでたい


 「L」をもとに「乙」に戻り解くことを試みます。
「乙」=「一」+「L」=>?+真心と感謝=>?+女の要素=>おとめ

「一」の意味は「いち」と「地平線=>地面」の二つを既に獲得しましたが、どちらもあてはまりません。「一」が更に別の意味を持っていると考えないとこの壁は越えられません。

これまでに解読した文字を手掛かりに「一」の意味を引き出せるでしょうか?「母」「大」の字を思い出してください。
「母」:=横に腹の膨れたもの=>はは
「大」:=一番大きい男=>大きい男=>おおきい

「母」の横棒は膨らんだ腹を示し、他方「大」は両腕を広げた男を示しています。ここから「乙」を解く共通の意味を取り出すのです。取り出した要素は「からだ」です。

」:=からだ
」=「田」+「一」:=生むもの+体=>生む体=>はらむ体=>はは
」=「人」+「一」:=おとこ+体=>男の体=>おおきい
「母」は横の腹の広がるイメージと「からだ」を意味する横棒の利用が絶妙にダブっていることが分かります。また「大」では「からだ」を意味する横棒が両手のイメージと重なり両手両足を開いた男の象形を訴え掛けます。これで「乙」が落ち着きます。
」=「L」+「一」:=女の要素+体=>女の体=>おとめ


「一」が分かったので来た道を少し戻ってみましょう。「士」の字を手掛かりに「十」を更に深く解読することができます。「士」の辞書の表記は次の通りです。
「士」 字義:青年
    解字:象形。男子の性器がぴんと立った形にかたどる。青年男子の意。

いままでの検討から「士」は部首「十」と部首「一」を男子の性器の立った形に合成した、となります。結局の
「十」+「一」:=「立った男子の性器」+「体」
と解釈できます。以上から次の意味の流れが取り出せます。
」=「一」+「|」:=体+棒=>棒のある体=>男根のある体=>男根=>(一本の)棒=>はり

更に「十」は「男根」の意味を持つ流れに「男」の意味があり、「九」の意味する「円熟した女」に対抗しています。「じゅう」は父系社会になって女を超えたものとして最後に追加された意味だったのです。
」=「一」+「|」:=体+棒=>棒のある体=>男根のある体=>男の体=>男=>じゅう


「十」が解けるといもずる式に「土」等が順調に解読できます。改めて「士」から始めます。
」=「十」+「一」:=男根+体=>男根の目立つ体=>青年男子
」=「十」+「一」:=男+体=>男の体(士の逆転)=>犯す男根の体=>犯す男子=>犯す=>(罰に)食を与えない=>ほす
」=「日」+「干」:=太陽+犯す=>日が犯す=>ひでり
」=「十」+「一」:=男+体=>男の体=>男=>座り込む体=>座る所=>地面=>つち  もしくは、
」=「十」+「一」:=男+地面=>地面の男=>座り込む男=>座ること=>座る所=>地面=>つち
」=「土」+「ム」:=男+ない=>いなくなった男=>さった男=>さること=>さる

 「士」は「土」に比べ体より棒の方を強調しており、「干」は「士」の上下を反転させた否定形です。字の上下を逆転させて否定形を造る手法も注意してください。
 「土」は「大」に比べ人が座った形に構成し、また、「一」の「つち」と「体」の意味が微妙にミックスされています。
 「去」もうまく納まりました。


 続いて次の一団も本来の姿を見せてくれます。
」=「|+ノ」+「十」:=垂れ流すもの+男=>垂れ流す男=>垂れ流すこと=>垂れ流し
」=「ノ」+「廾」:=特別な+垂れ流し=>垂れ流す量=>液体の量=>しょう(液量単位)
」=「日」+「升」:=太陽+特別な垂れ流し=>小さくなる太陽=>のぼる朝日=>のぼる
」=「ム」+「廾」:=ない+垂れ流し=>垂れ流しがない=>垂れ流しを止める=>べん

 これまでに解読した内容とも矛盾なく全体が繋がります。特に「昇」で大きな朝日が垂れ流して小さくなるという考は、草木の水が垂れ流されて小さく乾燥する現象の応用です。
 「弁」もうまく納まりました。


 「一」が「体」の意味を持つことを突き止めることで、漢字解読の大きな足場を獲得できました。例えば「武」の左上の横一棒には苦しめられましたが、容易に解決します。
」=「一」+「止」+「弋」:=からだ+とめる+くい=>くいを止める体=>鍛錬した体=>いさましい


 参考のために辞書での今回の文字に関する解字だけを簡単に載せておきます。
「元」 解字:形声。意符の一(あるいは●。あたまの意)と、音符の兀(ゴン、まるい意=丸)とから成る。頭が丸い意。
「干」 解字:象形。敵を突き刺す二股の武器の形にかたどる。突き刺す武器の意。ひいて「おかす」意に用いる。
「旱」 解字:形声。意符の日(ひ)と、音符の干(かわく意)とから成る。
「土」 解字:象形。地中から吐き出されるように発芽する形にかたどる。
「去」 解字:象形。飯入れの容器と、その蓋の形にかたどる。空っぽの容器から蓋を離したさまによりのける、ひいて「さる」の意味に用いる。
「廾」 解字:象形。両手を高く上げて物をささげているさまにかたどる。手でものをささげる意。
「升」 解字:象形。ますの中に酒をくみ上げた形にかたどる。一説に会意という。
「昇」 解字:形声。音符の日(ひ)と、音符の升(のぼる意=登)とから成る。日が昇る意。
「弁」 解字:象形。両手で冕(ベン、冠の象形)を持ち上げて、かぶろうとしているさまにかたどる。
「武」 解字:形声。意符の止(あし)と、音符の戈(またぐ意=跨)とからなる。

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【2006/07/22 08:21】 | 解読の前に | TRACKBACK(0) | COMMENT(3) |

「乙」の検討-その18

今回は「乙」の字を検討します。まず辞書の意味から出発です。

「乙」 部首解説:これを元にしてできている文字はきわめて少なく、主に文字整理の上から設けられた部首。文字を構成する一画としては、曲がっているさま、押さえるさま、伸び出すさまを示す。楷書で「L」(注:活字がないので英字を流用)の字形を持つものを含めており、その形を俗に「つりばり」と呼ぶ。

 「乙」の部首の字には「乞」と「乾」の他は「L」を持つ字ばかりですが、例外的に「九」と「丸」があります。
「乙」は一画となっていますが、何か変です? 「L」は一画で「乙」は二画です。そして「乙」の部首の中にある「九」と「丸」だけは「乙」の展開と考えられます。
 更に「乙」の部首の字にある「九」と「丸」の存在は、類似の「几」「凡」が「乙」の仲間であることを教えてくれています! まとめて辞書を確認しましょう。ついでに部首「風」も後で述べるのでいっしょに調べておきます。

「乙」 字義:きのと、おつ
    解字:象形。中間に太い握りがあり、上下両方とがっている、両刃の彫刻等の形にかたどる。
「几」 字義:肘掛、脇息
    解字:象形。座ったとき身を寄せ掛けたり、ものを置いたりする、脚のついた台の形にかたどる。
「凡」 字義:およそ、すべて、なみの
    解字:象形。水を受けるたらいの形にかたどる。
「九」 字義:きゅう
    解字:象形。肘を曲げたさまにかたどる。
「丸」 字義:まるい
    解字:形声。意符の人と、音符の厂(カン、丸い意)とから成る。仄(ソク)を反対むきにした字。人が体をごろごろさせて寝返理をうつ意。
「風」 字義:かぜ
    解字:形声。意符の鳥(後に虫に変わった)と、音符の凡(おおきい意)とから成る。大きい鳥鳳凰の意。借りて、「さぜ」の意に用いる。

辞書の字義と解字からは全く関係も手掛かりもつかめません。


 我々は「|+ノ」:=垂れ下がるもの=>のき=>ひさし であることを「尸」(その16)で解読しました。これを使って「戊」の字を手掛かりに意味を拡張しておきましょう。

「戊」=「|+ノ」+「戈」:=垂れ下がるもの+武器=>垂れ下がる武器=>紐の付いた武器=>錘のついた武器
から、次のどちらかが考えられます。
「|+ノ」:=垂れ下がるもの=>紐
「|+ノ」:=垂れ下がるもの=>おもり

一方「几」は「乙」の仲間としますが、すると次のどちらかです。
「几」=「乙」+「|+ノ」:=乙女+紐
「几」=「乙」+「|+ノ」:=乙女+おもり

そこでうまく辻褄が合うためには結局全体が次のように成ります。
|+ノ」:=垂れ下がるもの=>紐
」=「|+ノ」+「戈」:=垂れ下がるもの+武器=>垂れ下がる武器=>紐の付いた武器
」=「乙」+「|+ノ」:=乙女+紐=>飾紐(地位の象徴)の女=>女首領=>指揮する女=>一般の女=>?=>肘掛
」=「几」+「丶」:=女首領+特別な=>特別な女首領=>平凡な女=>平凡なこと=>みんな
」=「乙」+「|+ノ」:=乙女+紐=>最高の飾紐のある特別な女首領=>最高に円熟した首領女=>九歳になった女=>九才=>きゅう
」=「九」+「丶」:=成熟した女+特別な=>特別に成熟した女=>円熟した女=>まるい
」=「尸」+「九」:=しり+成熟した女=>成熟した女のしり=>しり
とまとめることができます。

「九才」が原始社会での女の成熟年齢であったと思われます。これはについては「八」「七」の関係で後に詳しく述べます。

始め「尸」だけで「しり」を意味していたのが、「尸」が次第に「しり=>突き出したもの=>ひさし状のもの=>のき=>覆うもの 」と変わっていったために、改めて「九」を加えて「しり」の意味を表わしたと考えられます。


 部首「風」は象形ではなく形声で説明されています。部首は基本的に象形とされていますが、さすがに画数の多い字はすべて象形で説明するのは困難であったらしく、七画あたりから画数が多くなるに従い形声(会意ではない)で説明される部首が現れてきます。

」=「几」+「ノ」+「虫」:=乙女+特別な+虫=>特別な虫のいる女=>かぜを引いた女=>悪寒のするもの=>かぜ

風邪は一時的に特別な虫が体に入ったと考えられたのでしょう。最初に示した辞書の解説は飛躍し過ぎています。

 体や身近に起こること(例:悪寒)が外の世界のある対象(例:風に吹かれる寒さ)と結び付き、外の世界に転用されることを「意味の外延」といいます。心や感情の状態や働きは形がないので逆に自然現象などに立心偏を付けたりして表現します(意味の取込み,意味の逆外延?)。


「几」「凡」「九」の関してですが、現代物理の世界で「スーパー」「ウルトラ」「ウルトラスーパー」のように時代と共に最上級が更新され、次の世代の平凡へと移り行くのは原始の社会でも同じようです。「几」は現在「机」「凱」や「殳」(役,殺,設,般,毅,段)にその意味が残っていますが、他の部分の解読が必要なので後に回します。


 今回の解読はかなり強引ですが、時代の流れで擦り切れた部分は想像で復元するしかありません。まずは進んで矛盾が生じればその時点で更新しながら先を目指します。


 次にいよいよ「乙」の追求に入りますが、問題が大きく資料の整理が大変なので次回まわしとさせてください。


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【2006/07/18 23:10】 | 漢字解読2 | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) |

「ハ」の検討-その17

 今回は「ハ」について考えます。そのままの形「八」と「分」「半」の内容を辞書で確認しましょう。
「ハ」 部首解説:これを元にしてできている字はなく、文字整理の上から設けられた部首。文字構成の上からは、分ける、開く、背くなどの意を示している。
「八」 字義:やっつ。わかれる。
   解字:指示。左右の両線が反って、互いに反発しているさまを示す。「はち」を示すのに片手の中三本指を曲げて親指と小指を立てて示した形が「八」の形をしていることからの借用。
「分」 字義:わける。
    解字:会意形声。意符の刀(かたな)と、意符と音符を兼ねる八(切り分ける意)とからなる。刀で切り分ける意。
「半」 字義:なかば。二分する。
    解字:会意形声。意符の牛(「|+二」は変わった形。うし)と、意符と音符を兼ねる八(左右に分かつ意、分かつ意)とからなる。牛の体を二つに分ける意。

 「半」の字は上の「ハ」が「ソ」に逆転していますが、設問解字も康熙字典も共に「ハ」の形です。たぶん毛筆が発達し早くたくさん書くと「ハ」が「ソ」に変化すると思われます。いずれにしろ辞書に示された以上の三つの字から「ハ」には「分ける」意味があることが確信できます。

「半」には既に解読した「|+二」があり「二本の棒」=>両手=>て の意味で正しく解読しておきましょう。
「ハ」:=分ける
」=「ハ」+「刀」:=わける+かたな=>刀で分ける=>わける=>こなごなにする=>こなごななもの=>こな
」=「ハ」+「|+二」:=わける+て=>手でわける=>二分する=>はんぶん

」=「分」+「皿」:=わける+さら=>分けるための皿=>大きな皿=>ぼん
」=「米」+「分」:=こめ+こなごななもの=>こなごなのこめ=>こな
」=「糸」+「分」:=いと+こなごななもの=>こなごなのいと=>短い糸=>まぎれる
」=「雨」+「分」:=あめ+こなごななもの=>こなごななあめ=>もや
」=「|+二」+「分」:=て+こなごななもの=>てがまみれる=>まみれる=>よそおう=>ふんする


参考までに辞書では「盆」は「形声。意符の皿と音符の分(ふくれる意)と成る。」と会意で説明できるのに形声で説明しています。また、辞書の「分」の意味には「こなごなにする」と「こな」の意味が見つかりませんが、「粉」「紛」「雰」「扮」の字からこの意味があったと推測できます。辞書では当然「粉」「紛」「雰」「扮」はみな会意でなく形声で説明しています。


」=「イ」+「半」:=男の仕事+手で分ける=>(女の)手分けの代理男=>つれて回る男=>ともなう
辞書では「伴」は「形声。意符の人と、音符の半(でっぷりとして豊かな意)とから成る。」です。


「券」も元字は上の「ソ」が「ハ」の形に書かれています。
」=「ハ」+「夫」+「手」:=わける+おっと+て=>夫の手で分ける=>争いを分ける手=>こぶし
」=「ハ」+「夫」+「刀」:=わける+おっと+かたな=>夫の刀で分ける=>わりふ=>けん
」=「ハ」+「夫」+「力」:=わける+おっと+ちから=>夫の力で分ける=>つかれる
」=「月」+「劵」:=>からだ+夫の力で分ける=>敵の体を奪い合って分ける=>かつ

辞書で「拳」「券」「劵」はいずれも形声で各々「手」「刀」「力」が意符となっており、残りが音符です。「勝」はまた少し血生臭い話になりましたが、康熙字典では「設問解字に舟偏が月に変わったとある」と解説され、当の設文解字には「力と朕の合成」と解説されており、両者の説明が違っています。


「小」と「公」の字を思い出してください。辞書で調べてみましょう。
「小」 字義:ちいさい
    解字:象形。甲骨・金文は三つの点を書き、微小・微細のものをかたどる。
「公」 字義:おおやけ
    解字:会意。意符の八(開く意)と、意符の口(又は○、ムは変わった形、囲む意)とから成る。囲みを公開して自由に出入りできるようにした公開した屋敷の意。

我々は既に「|」は「棒」又は「真直ぐ落ちる」の意味を知っています。又「ム」は「ない」の意味であることを知っています。そこで
」=「|」+「ハ」:=棒+わける=>棒で分ける=>小さい物を分ける=>ちいさいもの=>ちいさい
」=「ハ」+「ム」:=わける+ない=>(形)ないものを分ける=>役などを分ける=>皆の仕事をわける=>みなのものをわける=>皆のもの=>おおやけ
と解読しても矛盾を感じません。「小」は箸のような細い棒で小さいものを分けている情景が浮かびます。「小」もまた象形の仲間からはずすし会意とすることができるのです。

ここまでの「ハ」は文字の上について分ける意味を持ちますが、他に文字の下につく例、部首では「貝」や「頁」、部首以外では「只」「共」「兵」「具」「貞」「興」などがあります。

 「ハ」の意味がはっきりしてきたので改めて「ハ」の追求に入るはずなのです。期待を裏切って申し訳ないのですが、「ハ」がなぜ「はち」の意味に使われているのか、「ハ」がなぜ「分ける」意味となるのか、「ハ」が字の下に付くと何と解釈するべきか、という謎は非常に厚い壁です。これまでの解説では残念ながらこの壁を突き崩せないので、また改めて別の迂回ルートから追求することにします。


 「公」の検討を追加しておきます。上に示した「公」以外は分ける手段を「ハ」と組み合わせています。しかし、「公」は分ける目的を「ハ」と組み合わせています(他には「少」「巻」もこの類、後に解説)。

 単なる否定の記号であれば、「ハ」と組み合わせても「分けない」の意味しか生まれません。そして、「ム」の追求(その14)の時には「払」を除いてこの否定の使い方しか出てきませんでした。(「ム」の発音は日本で偶然「無」と同じです。)

 「ない」を意味する表記「ム」があるからこそ「公」は「(形)ないものを分ける」、「払」は「ないものを持つ」と言う意味を表現できるのです。

 「ム」はアラビア数字でないものを表わす「零の表記」に匹敵します!

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【2006/07/12 23:17】 | 漢字解読2 | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) |

「尸」の追求-その16

今回は「尸」の字です。まず辞書で意味と解字を確認します。

「尸」 部首解説:人体や人に関する意を表す文字ができている。覆い・しりなどの意を表わしたり履物(くつ)の意を表わしたりする(音は「シ」)。
解字:象形。人がくびを伏せて背を曲げた形にかたどる。一説に人が死んで体を伸ばして横たわるさまにかたどり「しかばね」の意を表わし、屍の原字という。

 「尸」は余り良い意味ではなさそうです。「尸」を直接に探求する前に部首としての使われ方を確認し、外堀を埋めましょう。まず仲間の字を探し辞書でその意味を確かめます。

「尾」 字義:=お
    解字:会意。意符の尸(しりの意)と、意符の毛とからなる。尻にある毛、「お」の意
「尿」 字義:にょう
    解字:会意。意符の尸(しりの意)と、意符の水とからなる。しりから出る水、小便の意。
「屎」 字義:くそ
    解字:会意。意符の尸(人体の意)と、意符の米とからなる。人体から出る米「くそ」の意。
「屈」 字義:かがむ
    解字:形声。意符の尸(陰部)と、音符の出(切り去る意)とからなる。
「届」 字義:とどく
    解字:(旧字:屆の解説 形声。)
「尻」 字義:しり
    解字:形声。意符の尸(しりの意)と、九(穴の意)とからなる。人のしりの穴の意。

 「尸」には確かに「しり」の意味があるようです。「尸」の意味が「しり」ならば「屎」「尿」「尾」が非常に分かりやすい会意文字で解読の必要がありませんが、「屈」になると形声で「尸」の意味が「陰部」となり一貫性がありません。「届」は既に解読した「由」の意味から解読できます。「九」についての解説は少し先に延ばし、その他を改めて解字しておきます。

」=「尸」+「毛」:=しり+け=>しりのけ=>お
尿」=「尸」+「水」:=しり+みず=>しりのみず=>にょう
」=「尸」+「米」:=しり+こめ=>しりのこめ=>くそ
」=「尸」+「出」:=しり+でる=>しりがでる=>かがむ
」=「尸」+「由」:=しり+上に伸びたもの=>伸びてしりまでくる=>とどく
とすべて「しり」の意味で明快に解読できます。


 「尸」の仲間の部首に「尸」に「ノ」を付けただけの「戸」があります。ただし「戸」は第一画が横棒ですが、設問解字も康熙字典も共に部首見出しの第一画は「ノ」です。以下の活字はこの「ノ」がすべて横の一棒になっているので気をつけてください。「戸」仲間を洗い出し確かめます。

戸 部首解説:これを部首にして、扉・部屋・家などに関する文字ができている。
  字  義:と
  解  字:象形。門の左半分の形にかたどる。部屋を守護するもの「と」の意。
「戻」 字義:もどる
    解字:会意。(以下、旁が犬である旧字の説明)
「扇」 字義:おうぎ
    解字:形声。意符の「戸」と、音符の羽(正確には翅の旁)とからなる。とりの羽のように左右に開く扉の意。
「雇」 字義:やとう
    解字:形声。意符の隹(とり)と、音符の戸とから成る。鳥の名。借りて、「やとう」意に用いる。
「扉」 字義:とびら
    解字:形声。意符の戸(と)と、音符の非(開く意)と左右にひらくと、扉の意。


以上を解読すると次のようになり「戸」を特別に象形と解説する必要がなく、「尸」の派生と考えられ、解読も順調に進みます。
」=「尸」+「ノ」:=しり+特別な=>特別な尻の動き=>股関節の動き=>何度も折れ曲がる=>行き来する
」=「尸」+「大」:=行き来する+大きい男=>何度もくる大きい男=>戻る大きい男=>もどるもの=>もどる
」=「尸」+「羽」:=行き来する+羽=>行き来する羽=>おうぎ
」=「尸」+「隹」:=行き来する+鳥=>行き来する鳥=>決まった季節にくるもの=>季節労務者=>やとう
」=「尸」+「非」:=行き来する+左右に分かれたたくさんの木=>観音開きの戸=>とびら

注:「扉」は先に解読した「非」:=左右に分かれたたくさんの木 の意味がそのまま生きている良い例です。


「尸」の意味が明確に見えてきたので改めて追求を始めます。「尸」は「口」と「|+ノ」からできています。ここで「|+ノ」は単なる「ノ」と違い縦棒の下が僅かに左にハネた形です。全体の意味が「しり」の意味であるならば、「口」は食べる口でなく肛門です。そして「|+ノ」は肛門から出るものとしか考えられません。結局「|」にはこれまで解読した「棒」の意味の他に「垂直に落下するもの」の意味があったと推測できます。

」:=真直ぐ落ちるもの (意味追加)
|+ノ」(左はね縦棒)=「|」+「ノ」:=真直ぐ落ちるもの+特別なもの=>真直ぐ落ちる特別なもの=>くそ=>垂れ落ちるもの=>垂れ下がるもの
」=「口」+「|+ノ」:=肛門+垂れ下がるもの=>腰に突き出すもの=>腰に垂れ出るもの=>しり
と三者セットで解読が成功です。

「尸」が覆いの意を表わすことから「|+ノ」(左はね縦棒)は長い間に更に意味が変化していると思われます。
 原始の世界では、人間は猿のように前かがみの姿勢であったらしく、横から見るとしりはひさしのように突き出す部分でしたから、次の変化の展開も考えられます。改めて全部を示します。
」=「口」+「|+ノ」:=肛門+垂れ下がるもの=>腰に突き出すもの=>腰に垂れ出るもの=>しり=>突き出したもの=>ひさし状のもの=>のき=>覆うもの
」=「尸」+「死」:=しり+し=>死体のしり=>死体の肉=>しかばね

「屏」「屑」は「しり」の意味で、「屋」「展」「属」は「ひさし状のもの」の意味で解読できるのですが、未だ旁の説明をしていないのでこれらも先に回します。

 ここまでで「尸」の部首解説に書かれた「覆うもの」まではたどり着けますが、「履物」の意味までには達することができません。実際「履物」を意味する「履」や「屐」は設文解字には載っておらず、後代の創作でしょう。

 設文解字には「屍」の字が既に記載されています。「尸」は康熙字典では「口」+「|+ノ」ですが、設文解字では「コ」+「|+ノ」となっており口の左が開いています。後に示すように「コ」には別の意味があり、「尸」は上が口でなければ全体の辻褄が合わなくなります。


 人間は食べる感覚の次には「排泄」の感覚に目覚めたようで、それが次第に「排泄する所」=>「しり」 の感覚となり、最後に自分の体全体感覚へと目覚めたと考えられます。「尸」が「排泄」から「尻」へ、更には「覆うもの」へと意味が変化するのに人類は数千年の時間を費やした考えられます。

 参考までに以上はフロイトが「肛門期」と呼ぶ人の生後まもない感覚の発展第二段階です。

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【2006/07/05 22:22】 | 解読の前に | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) |
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 このブログは漢字の解読を紹介します。従来、部首はほとんど象形とされていますが、部首である「用」「角」「車」「里」「鬼」「竜」「魚」「黄」は部首「田」を含んでいます。  「田」を含む部首を「田」から派生した文字と説明しようとする探検です。

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