象形文字の秘密
漢字の解読

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「弋」の追求-その15

 今回は「弋-丶」と「弋」の両者とその一連の仲間を調べます。康熙字典には「弋」(しきがまえ、音はヨク)は「丶」のない「弋-丶」の形がなく、「丶」が付いていきなり三画にでてきます。そして「設文解字」には「武」の字があるのに「弋」はなく、更に「ノ」が付いた「戈」(ほこづくり)でいきなり四画にでてきます。まず一連の字の辞書での意味です。

「弋」 部首解説:これを部首として、くいを用いた道具の意を表わす文字ができている。
    字義:くい、ぼう。
    解字:象形。断ち切った木の小枝の、先のとがったものの形にかたどる。
「戈」 部首解説:これを部首として、武器の種類、武器をもってする行為などの意を表わす文字ができている。
    字義:ほこ、たたかい
    解字:象形。石突きの付いた柄のある、鎌形の枝刃のあるほこの形にかたどる。一説に会意で弋と、意符の一から成るという。
「弌」 字義:いち   
「弍」 字義:に    
「弎」 字義:さん   
「代」 字義:かわる
    解字:形声。意符の人と、音符の弋(かわる意)とから成る。
「杙」 字義:くい
    解字:形声。意符の木と、音符の弋とからなる。果樹の名。一説に、会意形声で、弋はくいの意と音を表わすと言う。
「鳶」 字義:とんび
    解字:形声。意符の鳥と、音符の弋(とる意)とから成る。
「袋」 字義:ふくろ
    解字:形声。意符の衣と音符の代(ふくろの意)とから成る。

以上、同じ「弋」が「代」と「鳶」で現在の意味にひきずられて脈略もなく異り混乱します。また「袋」の説明では「代」がいつの間には袋の意味に代わっています?


 「弋」が検討したい中心です。我々は既に「十」:=棒 を知っています。「十」との間に関係が得られるでしょうか?

「十」と「弋」差は①棒の下端が右に曲がる変形と、②それに「特別な」の意味を加える「丶」の二点ですが、この二つの内容は正確に上の「弋」の解字に記述されています。両者を分ければ、

弋-丶」=「十」の変形:=棒+特定の切りだし=>用途合わせて切った棒
」=「弋-丶」+「丶」:=用途に合わせて切った棒+特別な=>先を尖らせた棒=>くい
と解読でき「弋-丶」も特別な象形とする必要がなく、「十」:=棒 の派生と考えることができます。

 「弌」「弍」「弎」は各々「一本のくい」「二本のくい」「三本のくい」で解説の必要がないと思われます。これまでの検討で得た結果を利用して先に上げた一連の字を解読すると、
」=「イ」+「弋」:=男の仕事+くい=>立っている男の仕事=>(女の)代わりに参加する男=>代わりの男=>かわり
」=「木」+「弋」:=木+くい=>木のくい
」=「弋」+「鳥」:=先の尖ったくい+とり=>尖った尾を持つ鳥=>三角の尾を持つ鳥=>とんび
」=「代」+「衣」:=>衣の代わり=>ふくろ
袋の意味似は少し解説が入るようです。腰にはいた半ズボンは脚の口を閉じれば袋となります。衣の代わりに袋をはいて行き、脚の穴を縛って収穫したものをたくさん入れて持って帰れます。


 「戈」は「弋」との差は「ノ」ですから何の問題もなく次のように解読でき、「戈」を特別な象形および部首とする必要がないことが分かります。
」=「弋」+「ノ」:くい+特別な=>特別なくい=>武器にするくい=>武器=>ほこ=>たたかう
ただし、裁縫の「裁」の字がある所から
」=「弋」+「ノ」:くい+特別な=>特別なくい=>尖らせた道具=>道具
と二つの流れが読み取れます。

「戈」の字もその展開を解読しておきます。「戈」の仲間である「伐」「戍」「戯」「我」および「戔」とその仲間たちについて調べますが、まず辞書の説明です。
「伐」 字義:うつ、きる
    解字:象形。人を戈(ほこ、武器)で刺撃した形にかたどる。人を武器で切り殺す意。
「戍」 字義:まもる
    解字:会意。意符「男」と意符「武器」とからなる。人がほこを持って国境を守備する意。
「戯」 字義:たわむれる
    解字:形声。音符「虚(最後の旁が旧字)」と意符「戈」とからなる。
「我」 字義:われ
    解字:会意形声。意符「手+(第二画の横長変形)」と意符と音符を兼ねた「戈」とからなる。
「戔」 字義:そこなう、あまり、のこり
    解字:会意。意符の戈(ほこ)二つからなる。ほこを交えて戦う意。ひいて、そこなう意に用いる。

 以上の解読ですが、「戍」は例外的に正しく解字されています。
」=「イ」+「戈」:=男の仕事+道具/武器=>切る/討つ
」=「人」+「戈」:=男+武器=>武器を持つ男=>まもる
」=「虚」+「戈」:=むなしい+武器=>実際でない武器=>たわむれ
」=「手」+「戈」:=て+武器=>手の武器=>手の武器を持つもの=>武器を持つもの=>わたし
」=「戈」+「戈」:=武器がぶつかる=>破損した武器=>壊れたもの=>そこなう
」=「戈」+「戈」:=武器を重ねる(過剰生産)=>余った武器=>あまる

 「我」の字の「戈」は「哉」「裁」「栽」「識」「職」のように左の字と融合する特徴がります。また、「戈」は長い時代に意味も徐々に変化したのでしょうが、発音の変化に比べて十分遅いのでこのように追うことができます。以上辞書の意味に合わせて解読したのですが、「戔」の中間達を取り出すと少し様子が変です。

「淺」 字義:あさい(=浅)
    解字:形声。旧字は意符の水と、音符の戔(すくない意)とからなる。水量が少ない、「あさい」の意。ひいて物事の程度の少ないことに用いる。
「棧」 字義:かけはし、たな(=桟)
    解字:形声。意符の木と、音符の戔(木や竹を編んでつくる意)とからなる。
「盞」 字義:さかずき
    解字:形声。意符の皿と、音符の戔(ちいさい意)とからなる。
「錢」 字義:すき、ぜに(=銭)
    解字:形声。意符の金と、音符の戔(先端が薄く削られている意)とからなる。
「箋」 字義:ふだ、かきもの
    解字:形声。意符の竹と、音符の戔(うすい、ちいさい意)とからなる。

改めて「戔」に遡って以上を解読し直すことが必要なようです。
」=「戈」+「戈」:=武器を重ねる=>うまく積める武器=>うすい武具=>うすい
」=「戔」+「皿」:=うすい+さら=>さかずき
」=「木」+「戔」:=き+うすい=>薄い木=>たな、かけはし
」=「金」+「戔」:=かね+うすい=>薄い金=>すき、ぜに
」=「氵」+「戔」:=みず+うすい=>薄いみず=>あさせ=>あさい
」=「竹」+「戔」:=たけ+うすい=>薄い竹=>ふだ、かきもの
となり、「戔」はほとんど「うすい」の意味で使われているのに、辞書には「うすい」の意味がないのです?

 「戔」の仲間の字は「設文解字」にはほとんど見当たらず、康熙字典ができるまでの時代、武器を多用する父系社会で造られた字だったのです。「戔」が始め「うすい」意味で、時代と共に新しい言葉「そこなう」と「あまる」が生まれるとき、「戔」のもとの意味まで戻り、「うすい」と枝分かれした形で「戔」に「そこなう」と「あまる」の意味を当てはめた、と考えられます。この手法は言葉を増やす素晴らし手法です。

 「弌」「弍」「弎」も予想通り「説文解字」にはなく、武器を扱う後代に武器を数える言葉として生まれたと考えられます。


 原始社会の過酷な現実に慣れてもらうためにも、今回の「我」の仲間の字を最後に敢えて紹介しておきます。
「餓」=「食」+「我」:=食う+武器を持つもの=>武器を持つものを食う=>うえる
(辞書:「餓」は音符の食と、我(ほねばる意)とからなる。食物に苦しんで骨ばる、「うえる」意)

hoko.gif

 人間は共食いを止める本能を持っていません。肉食の哺乳類でも犬や熊は本能で共食いをしません。「千夜一夜」の物語や、中国の「西皇后」の物語、世界各地の「城や砦の兵糧攻め」の記録など、共食いの記録は幾多も上げられます。また、北欧の「万歳」という言葉は「頭」を意味し、獲物とした人の頭骨で酒を飲む習慣であった名残なのです。(ちなみに「サッカー」の起源は西欧で被征服民の頭を切って蹴って凱旋したのが始まりです。)

 人類は誕生して以来四度の過酷な氷河期を越えてきていますが、豊かな時に増えた仲間を食料とし、やっと生き延びることができたのです。人間は牙や脚力の代わりに、そして共食い防止の本能をも犠牲として、ずっと素晴らしい理性を与えられています。

 人間という種は理性に賭けた生き物です。現在では社会制度や宗教等の「自己家畜化」により原始的本能を次第に淘汰する方法も獲得しています。
 素晴らしき理性が今日の繁栄と平和をもたらしていることに感謝しましょう!
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【2006/06/28 08:04】 | 解読の前に | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) |

「ム」の追求-その14

 今回は「ム」の意味を追求します。まず「ム」の辞書の内容の紹介です。
「ム」 部首解説:これを元にしてできている字はきわめて少なく、おもに文字整理のために設けられた部首。
    字義:わたくし、ござる
    解字:象形。すきの形にかたどる。農耕用のすきの意、借りて私の意にもちいる。

解字の中の「借りて」というのも前の「転じて」と同じく前後の切れる脈略を強引に繋げる言葉なので注意してください。


 「ム」の項には 厷、厺、去、参、私、參、公、牟、台、矣、允、弁、払、などの字がありますが、以上の字から手掛かりが得られません。しかし次の字を良く眺めてください。かすかに垣間見える意味の共通点を捕らえます。
「払」=はらう             <=手にはもうない
「去」=さる              <=もういない
「弁」=べん              <=もれない
「仏」=死人(俗な意味)、悟った人 <=いない男
(注意:「払」は「拂」の略字、「仏」は「佛」の略字とされ「設文解字」には両者ともありません。また辞書の解字は常にもとの複雑な字で解説され省略形の字の解字は一切ありません。)

「ム」には「もうない」「なくなった」もしくは「ない」の意味がありそうです。

先の手掛かりの得られなかった字の中で、比較的分かり易い偏や旁のついた字を探します。捕まえたのは「矣」(音は「イ」)の字です。仲間を辞書から洗い出します。
「矣」 字義:句末の助字。疑問、反語や感嘆、詠嘆の気分を表わす。
    解字:形声。意符の矢(真っ直ぐに飛ぶ意)と、音符のム(止まる意)とからなる。
「挨」 字義:背を打つ、おす、のばす
「俟」 字義:まつ
「竢」 字義:まつ
「唆」 字義:しぶしぶ答える
「誒」 字義:ああ、嘆きいたむ声
「欸」 字義:なげく、ため息をつく
「埃」 字義:ほこり
「涘」 字義:きしべ、みずぎわ

以上が「ム」+「矢」=矢+ない=>矢がない
の意味で検証できるでしょうか?

強引にこね合わせる連想ゲームでまとめると、
」=「ム」+「矢」:ない+矢=>矢がない=>気が抜けた=>張のない=>なくした(詠嘆)
」=「扌」+「矣」:両手+矢がない=>矢のない手=>敵意のない手=>抱擁して背を叩き合う=>背を打つ(挨拶のアイ)
」=「イ」+「矣」:男の仕事+矢がない=>矢のない時の仕事=>矢ができるのを待つ=>まつ
」=「立」+「矣」:立つ+矢がない=>矢がなくて立つ=>その場で矢造りをまつ=>まつ(注:「立」は女の意味を含みます。後述)
」=「口」+「矣」:くち+矢がない=>矢をなくしたくち=>しぶしぶ答える
」=「言」+「矣」:ことば+矢がない=>ああ、嘆きいたむ声
」=「矣」+「欠」:矢がない+口を開けた男=>矢をなくしてなげく男=>なげく、ため息をつく
」=「土」+「矣」:土+気の抜けたもの=>気の抜けた土=>ほこり
」=「氵」+「矣」:みず+気が抜けた=>気が抜けた水=>波立たない水=>きしべ、みずぎわ
以上無理なく意味の流れが追えました。改めての解読と追加分です。
」=ない 
」=「扌」+「ム」:て+ない=>手になくなった=>はらう

」=「禾」+「ム」:いね+ない=>イネのないもの=>哀れな者=>わたし
」=「弓」+「強-弓」:ゆみ+虫がいない=>回虫のいない弓手=>強弓を引くもの=>つよい


 中国文化は南方と北方、奇数と遇数、尊敬と罵倒、右側と左側、善と悪、上と下、等、反対概念の対比に特徴があります。言いたいのは 
」=ある 
の対が成り立つことです。

実際に
」=「マ」+「男」:ある+男=>男性的である=>勇気がある=>いさましい
と簡単に解読できます。


 辞書では「私」は会意形成、「強」と「勇」は形声です。以上は私にとって途中で読むのも面倒になる不可解な内容であり、解読のヒントが全く得られず、従って書くのも省略します。


 今回の成功は「矣」の字のお陰です。それにしても、弓矢が長く生活に密着していたこと、そして矢をなくすことは生きるのに障害となるほど大変なことだったのだろうと想像できます。また、字の成立から考えると、この「弓矢の時代」以前に多くの部首が既に存在していたと考えられます。

muma.gif

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【2006/06/22 21:22】 | 漢字解読2 | TRACKBACK(0) | COMMENT(1) |

「一」「ニ」「三」の2-その13

 今回は「大」「夫」「春-日」を検討します。これらはいずれも「人」が骨格となっており、横棒の相違が字の意味を分けています。「春-日」は現在既に単独では使われていません。「人」「大」「夫」についての辞書の解説を調べておきます。
「人」 字義:ひと
    解字:象形。人の体を側面から見た形にかたどる。
「大」 字義:おおきい
    解字:象形。大きな成人男子が正面を向き、両手両足を広げて立っているさまにかたどる。
「夫」 字義:おっと。
    解字:会意。意符の大(おとな)と、意符の一(冠に押すかんざしの形)とからなる。冠にかんざしを押した大人、元服した一人の男子の意。

 これまでの検討と、「大」と「夫」の意味からその骨格「人」は純粋に男を意味するとします。
」=「人」+「一」:男+いち=>一番の男=>一番大きい男=>おおきいこと=>おおきい
」=「人」+「二」:男+に=>二番目の男=>次に大きい男=>連れ添う男=>おっと

 「春-日」は現在使われていませんから、例の漢字に聞く方法「春」「奉」「秦」から逆に共通意味を取りだし調整します。
「春」:はる               <=穏やかな日
「奉」:たてまつる、ささげ持つ   <=穏やかな腕
「秦」:ふくよかな米(地名)     <=穏やかな米の取れる所
少々強引ですが、これまでの「一」「二」「三」の使われ方などから類推し全体をまとめます。
春-日」=「人」+「三」:男+さん=>参番目の男=>穏やかな男=>穏やかなこと=>おだやか

人が偏になった形の人偏、彳偏も修正しておきます(-その11)
*「」:働く男=>仕事をする男=>部族内の男仕事
*「」:「イ」+「ノ」=男の仕事+特別な=>男の特別な仕事=>部族外の男仕事

 「大」の文字は「一」と「人」の組合せた形が両手両足を開いた男の形に合成でき、見て直感的に理解できることに成功しています。しかし、「二」と「人」の組合せは全体の形よりも組み合せ要素の意味を尊重しています。組合された全体の直感的な理解は難しくなりますが、意味の要素を組合せることで複雑な内容を1字にまとめることができるのです。
(耳言語では「二」と「人」の合成音を作れないので順に発音することになりますが、目言語では「二」と「人」を一つの字として合成し、なるべく直感的に分かるようにデザインできます。)


「旦」に注目してください。ここに使われている「一」の意味が「一日」の意味ではないようです。「旦」の字を辞書で調べると、
「旦」 字義:あした、あける、日
    解字:象形指示。日(ひ)が一(地平線)より現れ出るさまを示す。太陽が地平線から始めて現れる時分、早朝の意。

「旦」が早朝の意味だとこれを含む字(例えば「陽」)の理解ができないので、共通の意味を取り出して解読しておきます。
「担」:になう、かつぐ、うけもつ     <=緩やかに持つ
「但」:ただに,ひたすら、むなしい   <=緩やかな男仕事
「坦」:たいら、ゆるやか         <=緩やかな土地
「疸」:たん                 <=緩やかな病
「靼」:なめし皮              <=緩やかな皮
「怛」:いたむ、かなしむ、うれえる   <=緩やかな心?

この結果と、「一」が地平線の意味だとしてまとめると、
」:象形。地平線=>地面
」=「日」+「一」:日+地面=>地上の太陽=>ひるま=>晴れた日=>穏やかな日=>穏やか
と解読できます。

「一」が地平線を表わす象形であることには素直に納得できます。これで「一」は二つの象形の由来を持つことになります。


最後に「大」と「夫」の変形や修飾形を紹介しましょう。
」=「大」の変形=>男の仲間=>けもの(偏)
」=「大」+「丶」:大きい男+指示=>大きい男の股間=>男根が太い=>ふとい
」=「大」+「丶」:大きい男+指示=>大きい男の別者=>男に継ぐ忠実なもの=>いぬ
」=「大」+「ノ」:大きい男+特別な=>特別に大きい男=>若死にする男=>ふきつ

」=「夫」+「ノ」:おっと+特別な=>特別な夫=>なくした夫=>なくす
」=「扌」+「夫」:両手+夫=>手にした男=>養う男=>やしなう
(「」=「扌」+「奄」:両手+纏足の男=>手にした纏足の男=>かくまう、かばう)

 辞書の解字では「犬」が象形で「犭」はそれが偏となった形、「太」は大を重ねた原字を省略した会意形成、「夭」は象形、「夫」は「大」と「一」の会意、となっています。

daidai.gif

 命を生みそして守る女の方が命に対して繊細であったようで、この繊細さが人類の知恵の源でしょう。動物から一歩早く抜け出した女が、出遅れた男を獣とみなした原始の時代、漢字の解読を手掛かりにペットや家畜のレベルから人間へと脱皮する成長を暖かく見守ってください。

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【2006/06/18 10:51】 | 漢字解読2 | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) |

「一」「二」「三」-その12

 今回は横棒に特徴のある「一」「二」「三」と、横棒と縦棒に特徴のある「十」、手偏(扌)、「丰」についてです。まとめて辞書の意味から確認します。
「一」 字義:ひとつ,まとめる,おなじ,すべて,いち
    解字:象形。右手の人差し指を一本突き出した形にかたどる。
「二」 字義:ふたつ,わける,二度,にばい,二番目,つぎ
    解字:象形。「一」を二つ重ねた形にかたどる。
「三」 字義:みっつ,三倍,三分,なんども
    解字:会意。おなじ長さの「一」を三個積み重ねた形にかたどる。

「十」 字義:とお,とたび,十倍,すっかり
    解字:古代の針の形にかたどる。中央のふくらみは糸を通す穴。
「扌」 部首解説:手が偏になったときの省略形
    解字:無し
「丰」 字義:茂る草,みめよい
    解字:象形。豊かに生い茂った草の高く伸びているさま。また茅が背高く伸びるさまにかたどる。
 
 以上「一」が象形であることに異論はありません。「二」を「一」と「一」の会意としても、「三」を「一」または「一」と「ニ」の会意としても余り問題はないようです。


 「十」を問題にします。辞書の解字で「十」は針の形と解説しており、「針」の字は金偏が付いています。「十」は針そのもののようですが、横の一棒が糸の穴には見えません。

 視点を変えて、手偏(扌)を思い出してください。横棒が一本多い形で、手は二本です。連想が結び付いたでしょうか? 針「十」の横棒は針穴ではなく「一」の意味、手偏「扌」の横棒は「二」の意味とみなします。すると、「」は棒の意味と解釈できます(注意:「扌」は辞書に解字がない)。

」=棒
」=「」+「一」:棒+一=>一本の棒=>はり
」=「」+「二」:棒+二=>二本の棒=>二本腕=>て(手偏)

 他の漢字で検証できるでしょうか? 「引」「千」の字と、形の異なる類似の字「手」「牛」と「辛」「協」で考えると、
」=「弓」+「|」:弓+棒=>弓の棒=>弓をひくもの=>引くこと=>ひく
」=「十」+「ノ」:一本棒+特別な=>特別な棒の束=>千本の棒=>千本=>せん
」=「扌」+「ノ」:二本棒+特別な=>両腕の特別な所=>両手のひら=>て
」=「扌」+「ノ」:二本棒+特別な=>特別な二本棒を持つもの=>二本角を持つもの=>うし
」=「立」+「十」:たつ+一本棒=>立った針=>刺さる/つらい=>舌に刺さる=>からい
」=「十」+「協-十」:一本棒+たくさんの力=>一本棒に力を合せる=>あわせる
とすべて会意で解読できます。
辞書で「千」は会意形声(?)、「手」と「牛」と「辛」は象形、「引」と「協」は形声と説明されています。

 では「三」と縦棒「」の組合せはどうでしょうか? 上で参考とした「丰」の辞書の意味では期待した「三本の棒」または「たくさんの棒」と繋がりません。

しかし「非」の文字を良く見てください。三本の棒を左右に二分する構成です。辞書では、次のように解字しています。
「非」 字義:あらず,誤り,否
    解字:象形。飛ぶ鳥が両翼を左右に開いているさまにかたどる。

ここで強引に「三本の棒」の意味を主張すると、
」=三本の棒 
」=「丰」を二分する=>三本の棒を二分する=>できない=>だめ
と意味が難なく繋がり、部首「非」の解読ができてしまうのです!

 今回紹介した内容から「|」「一」「ノ」を原始部首の仲間とします。

ichinisan.gif


 「康熙字典」には「丰」が載っていますが、「説文解字」(AD100年)では「丰」がなく横第一画が「ノ」に置き変わった字が載っています。 また、「説文解字」には金偏の字に銀,銅,鐡,錬,釘,鋏,鏡,鍛,鎔など、その外「辛」、「計」も載っているのになぜか「針」が載っていないのです?


 余談ですが、「二」と「三」を各々千回書いてみてください。いやがらないで続ければ面白いものが見えてきます。
 アラビア数字の「2」「3」の骨格が見えたと思う人は正解です(3は他と区別できる範囲で省略された結果です)?

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【2006/06/14 00:49】 | 漢字解読2 | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) |

「ノ」の追求-その11

「人偏」と「彳偏」
 白,自,手,壬,などの「ノ」の意味を取り出しましょう。似た形に縦棒が長く末端を左にはねた「丿」(ヘツ)があり、意味が全く異なりますから注意が必要です。仲間が多く意味の取り出し易い兄弟のような字、人偏(イ)と彳偏を手掛かりとします。最初に辞書の部首解説を調べます。

人偏〔部首解説〕:これを部首にして人の状態・動作・性質などを表す。この場合多く偏に成ってイの形をとる。
彳偏〔部首解説〕:これを部首にして、道、または道行く動作などに関する意を示す文字ができている。

 人偏の字はたくさんありますから、まづ彳偏の字から比較する仲間を選びます。

「彳偏」:役、従、待、行、徒、徐、往、復、征、律、得、御、徹
 辞書での彳偏の字の説明は正しいようです。更に良く眺めると人の仕事を示す言葉のようです。以上の字から従順で役目に忠実なサラリーマンが連想できます。

 次は比較のために人偏の中で特に動作に関する字を選びます。ただしなるべく画数が少なく後代にできた繁雑な字を避けます(厳密には康熙字典で確認する必要がありますが)。

「人偏」:仕、代、付、伺、促、伐、佐、作、供、使、侍、保、俢、係、借、任、伝、伍、等
 人偏の動作は彳偏に比べ身近な仕事の意味が共通に読み取れます。

 改めて両者を比べると、交通事情の未発達の原始社会での部族内の仕事と部族外の仕事が、各々人偏と彳偏の意味の違いのようです。
 歴史的には部族内の仕事を、人の仕事の意味を持つ人偏を付けて表わした。次第に部族間の関係が複雑になり、部族間の仕事を彳偏で表わした。ちょうど英語のダッシュが似て非なるものを表わすように、新たな仕事を表わす字として「ノ」を加えて彳偏を造ったと考えられます。人偏を動作に限り彳偏と対比させてまとめると、次のようになります。
」:働く人=>仕事をする人=>部族内の仕事
」:「イ」+「ノ」=人の仕事+特別な=>人の特別な仕事=>部族外の仕事

 試しに共に象形とされる二組の字、「木」「禾」と「米」「釆」に当てはめてみますが、これに先だって辞書の各解字を調べておきます。
「木」 解字:象形。立ち木の形にかたどる。字形は枝と幹と中根とわき根を表わす。
「禾」 解字:象形。穀物の未の垂れ下がった形にかたどる。種が分散するところから分かれ意。
「米」 解字:象形。もみがらから出た黍(きび)の粒のさまにかたどる。籾殻を破ってでた粒の意味。
「釆」 解字:象形。掌の上に種を乗せた様にかたどる。手で種をまく意。

 「ノ」の「特別の」または「特別な」という意味の繋がりで説明できるでしょうか?
「禾」=「木」+「ノ」:木+特別な=>特別な木=>米のなる木=>いね
少し無理を感じるので、なじみの深い辞書の木の象形図をとり入れ「木」の最初の意味が「草木」だったと変更しましょう。
」=「木」+「ノ」:草木+特別な=>特別な草木=>米のなる草木=>いね
」=「米」+「ノ」:米+特別な=>特別な米=>脱穀した米(白米)=>籾殻をとること=>解き放つこと

 途中で「木」の元の意味に一歩近付くことができたことは大きな収穫です。始め「木」は草木の意味で、時代が進み「ノ」を付けて稲を表わすようになると、残った草木の中で幹を持つものが「木」で表わされ、木質のないものを指す「草」の字が別に生まれたと考えられます。


 確認のために、既に学んだ「田」と組み合わせてみましょう。
」=「釆」+「田」:白米が生むもの=>白米がもたらすもの=>順番に見張ること=>順番=>ばん

 ちなみに辞書での「番」の解字を参考に付けておきます。
「番」解字:会意象形。意符(田)のはたけと、意符と音符を兼ねる釆(手で種を撒き散らす意)とからなる。田に手で種を撒く意。転じて、かわるがわるの意にもちいる。
 注:辞書の解字の中の「転じて」とは前後の意味の脈絡が切れるときの常用語ですから注意が必要です。

以上、今回「ノ」が確定できました。
」:「特別の」または「特別な」

*「」:草木=>き
*「」=「田」+「木」:生むもの+草木=>草木を生むもの=>かじつ
                 *は解読が進み更新した印です


 アルタミラの洞窟の芸術的壁画が約1万数千年前、最終氷河期が約1万年前、黄河文明で農耕が始まったのはおよそ6000年前、新石器時代の始まりは約5000年前です。
「木」から「禾」が生まれたのが6000年前頃以降ですから、漢字は旧石器時代に既に生まれていたのです。そして、成立がこの時代より古いと考えられる字、例えば「木」に関する考察は既に6000年以前の世界に踏み込んでおり、漢字に刻まれた歴史の探検でもあります。

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【2006/06/09 20:43】 | 漢字解読1 | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) |

「田」の展開2-その10

 「申」の90度回転した文字「貫―貝」を考えてください。「貫-貝」はこれまでの検討から「左右に成長するもの-左右に伸びるもの」を表しているはづです。左右に成長するものとは具体的に何であるかを問題として少し考えてください。
 解答は、次の「曲」のあとに解説します。「曲」の項を読む前に解答を考えてみほしいのです。


 「曲」とそれを含む「豊」を検討します。まず辞書の意味を確認すると
「曲」 字義:まがる
    解字:象形。木や竹で作られたまげ物の容器の形にかたどる。物を曲げて作った容器の意。
「豊」 字義:ゆたか
    解字:(「豐」旧字による解説、省略)
「曲」が象形であることに注意してください。康熙字典は「豊」と「豐」が別字としてあります。


 「曲」は上に伸びる二本の直線があります。これまでに学んだ「由」「甲」「申」「電-雨」「奄-大」の中心の縦横軸変形とは違い、上に成長する意味を二本の縦棒で示したようです。これは「上に伸びる複数のもの」具体的には「草木の芽」に違い有りません。
」:たくさん上に向かって伸びる芽=>たくさん上に伸びるもの=>まがる
」=「曲」+「豆」:豆の曲がった芽=>たくさんの豆の芽(もやし)=>心豊かにするもの=>心豊か=>ゆたか

 単子葉植物の稲の芽、双子葉植物の双葉、競って芽を吹く木の芽、全てたくさん上に曲がって伸びます。

 指示の点を付けて新しい漢字を作る手法は学んでいます。「由」と「曲」の例は「(特定の意味を持つ)部分を二重」にして新しい漢字(新しい概念)を造る手法です。この字の場合縦の一画が複数の芽を表しており、これは別の「指示」の造字法といえます。


 最初の問題に戻ります。左右に成長する具体的なものが分かりましたか? 解答は「妊娠した腹」が正解です。
貫-貝」:左右に成長するもの=>妊娠した腹=>妊娠したもの=>妊婦=>はは(「」)
そうです「母」の字の骨格は「妊娠した腹」で「貫-貝」の変形です。我々は一度「母」の字の象形図を教え込まれると、2000年もの長い間1歩も飛躍できなかったのです。
 「貫」の字で確かめたいのですが、それは「貝」の字を解読した後の解説とします。


注:「田」の縦軸の変形を持つ「縄」の旁ですが、大字源では旧字「繩」の省略形となっており、康熙字典には旧字の「繩」しかありませんから解読の対象から除きます。


 「田」の追求はここで壁にぶつかります。「田」が「生まれる」という意味を持つことが確信できました。実はもう一つの発見があります。「雷」「男」「果」の三つの字を良く見てください。単独に使われる「田」が縦に繋がる場合、
「田」の上にあるものは「生む」の主語、
「田」の下にあるものは「生む」の目的語
になっているようです。中国語の文章の語順、主語-動詞-目的が漢字の造りの中に既に現れています。

ta2ta2.gif


 漢字の解読は、ジグゾーパズルを解くように、あちこちの解けた断片を少しづつ大きくして全体を捕らえるよりないので、次回からは別のルートを探ります。

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【2006/06/06 07:18】 | 漢字解読2 | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) |

「田」の展開-その9

 確認です。「危」の解読の時に「厄」の造りは不明であるがその形の意味を無条件に正しいとした手法を思い出してください。この段階で「危」=「ク」+「厄」と解読できましたが、「厄」の解読は未完了です。このやり方で「意味の塊」を加減算して少しずつ解読の範囲を広げていきます。


 前回の続きです。「田」が原始部首だと主張するためには、一般の文字ばかりか全ての象形とされる文字の中に「田」があれば、それは「生まれる」という意味だといえなければなりません。

 手始めに「雷」「男」「果」を検討しましょう。まず辞書の内容を確認します。
「雷」 字義:いかづち,かみなり
    解字:形声。意符の雨と、音符の[壘/上](活字がないので壘の上の部分を以下[壘-土]又は[壘/上] と表現します)」(田はこの省略形)とから成る。雨の中でそれからそれへと繋がって回転する音、「かみなり」の意。
「男」 字義:おとこ
    解字:会意。意符の田(たがやす)と、意符の力(ちからの意)とから成る。耕作に堪える力の意。ひいて、堪える力を持つ「おとこ」の意に用いる。
「果」 字義:くだもの,はたす,まこと
    解字:象形。果物が木の上になっているさま、木の上部にある小さな塊、果実の意。
 「男」では「田」が「たがやす」意味で、「果」は田を飲み込んだ象形とされています。


 これまでに検討した「田」の意味が当てはまるのでしょうか? 以下のようになります。
」:「雨」+「田」=>雨から生まれるもの(雨が生むもの)=>かみなり
」:「田」+「力」=>力を生むもの=>力のあるもの=>おとこ
」:「田」+「木」=>木を生むもの=>木の実=>かじつ
まずは快調に会意で説明でき解読成功です。


 次に「電」を検討します。「甩」は「田」から下に曲がって伸びた一画があります。この字の部分はもはや単独では存在せず「電」と「竜」の中にのみ残っています。

まず辞書の記述です。
「電」 字義:いなずま
    解字:会意形成。意符の雨と、意符と音符を兼ねる申(「甩」は変わった形。いなずまの意)とからなる。雨を伴ういなずまの意。
「竜」は「龍」の項に略字と記述されているだけで、他の解説はありません(康熙字典でも同じです)。
 結局「甩」だけでイナズマの意味があると説明しています。「電」で説明したイナズマの意味だと「竜」では通じません。


 これまでの「由」「甲」「申」の応用で、「甩」の意味は「下に曲がって成長するもの」と類推できます。これで辻褄が合うでしょうか?
」=「雨」+「甩」:雨で下に曲がって生まれるもの=>いなずま
」=「立」+「甩」:下に曲がって成長した足で立つもの=>ワニ,トカゲ類=>りゅう
と各部分の会意として説明でき解読成功です。


次に「奄」を取り上げます。「申」の下が曲がって伸びた形です。まず辞書の意味と解字を確かめます。
「奄」 字義:おおう,おおきい,いこう,ともに,ながく
    解字:形成。音符の大(ひと)と、「奄/下」(=申。伸びる意=延)とから成る。足の一方が伸びてぴんとしない足なえの意。

 「奄」の中には「申」の下が曲がって伸びた形があり、これまでの追求から「上半身は正常で足が曲がって伸びた人」の意味がありそうです。辞書には近い意味が示されていますが根拠が漠然としていることと、他の字の場合との脈略がありません。

「大」は解説が少し先になりますが、説明のために意味の流れを先に示すと、「大:男の体=>大きい体=>おおきい」となります。従って、
」=「大」+「奄-大」:足が曲がって伸びた男の体=>纏足(てんそく)の男=>部族に止まる男=>長くとどまる=>ながく、ともに、いこう
と解読できます。

 実は漢字を創造したのは母系社会を築いてきた女であることが今回の解読から判明しました。秦の歴史書では女の支配する部族を征服した記録があります。2~3000年ほど昔から腕力を誇る父系社会へと人類の歴史が変わり、女尊男卑から男尊女卑へと移ります。
 母系社会では、男は一定の年齢になると村を離れて他の部族を回る旅にでる風習(「旅」の字の解読から判明)でしたが、種馬的に部族に残す男を纏足にして育てたのです。

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【2006/06/03 10:23】 | 漢字解読1 | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) |
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 このブログは漢字の解読を紹介します。従来、部首はほとんど象形とされていますが、部首である「用」「角」「車」「里」「鬼」「竜」「魚」「黄」は部首「田」を含んでいます。  「田」を含む部首を「田」から派生した文字と説明しようとする探検です。

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